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新・性教育指導要領 雛たちのはばたき 2/3
次に、映像ガイドはお互いの身体を愛撫しあうように指示した。いくらかの例は示すが、具体的にこうしろという指示はない。
やはり、先に行動したのは琴美のほうだった。恭太郎の手をつかんで、自分の胸に乗せた。
「揉みなさい」
「ぁい」
やはり声が裏返ってしまう。揉めというので指をおそるおそる曲げた。恭太郎が思っていたよりも意外と跳ね返りがあり、驚いた。よくよく考えるとブラジャーの弾力なのだろう。
恭太郎がそんな小さな謎をひとつ説いたところで、琴美は恭太郎の股間をわしづかみにした。
「ぎぐぅ」
決して快感のためにあげたわけではない声だった。男性のデリケートな部分が、かつてないような圧力で握られたからだった。琴美の手は、うどん粉をねるようにして、ぐい、ぐいと恭太郎の股間を責めたてた。恭太郎はとても琴美の胸を揉むどころではなく、ただ倒れそうなのを抑えるために、琴美の胸に手を置いていた。
「ま、こんなものね」
恭太郎はこんなものではないと強く確信しつつも、何も言えなかった。今回は琴美の心情を察したわけではなく、痛みに口がきけなかったからだった。
琴美は身体を離し、自然と恭太郎も崩れるようにベッドに腰を落とした。
しばし琴美はあごに手を置いてなにか考えているようだったが、映像ガイドをちらと見ると、何か思いついたようにこう命じた。
「長塚くん、そのまま寝そべって」
まだ声が出ないので、恭太郎はうなずいた。ベッドに寝そべってきをつけをした。
「――じゃ、性器を出して」
「ひっ?」
驚きで声が復活した。性器、性器……って何のことだろう。ナニのことだろうなあ、と自問自答を繰り返す。出すにしてもズボンを下ろしたものか、小用を足すときのようにチャックを開けてそこから出すべきか迷った。悩んだ結果、トイレと同じというのもいかがなものだろうかと判断し、ベルトをはずして、まずズボンを下げた。
琴美の顔を確認するが、続けろといわんばかりに無言でうなずいたので、恭太郎はえいやとトランクスも下ろした。
さきほどシャワーに入ったときにはおさめるのに苦労したほど張りつめていたものは、先ほど生まれてこのかたない力で握りしめられたので機嫌を損ねて縮こまっていた。
琴美は膝をついて、そのものに近づき、人差し指と親指でつかんだ。先ほどとは違い、ソフトにマシュマロをつかむようではあったが、それは先ほどの行為を反省したとか恭太郎に気を使ってというよりは、初めて直接触るものへの恐怖感からだった。
しかし、琴美は強気を見せることはやめず、勢いをつけてそれを口に含んだ。
縮んでしまったせいですっかりと皮に覆われてしまっている恭太郎のペニスが、いままで体験したことのない温かさに包まれた。自分の手では感じられない熱と、ぬっとりとした感触だった。
未知の感覚に、恭太郎のそれは機嫌を直し、少し頭をもたげた。琴美の口の中でふくらみ、上あごを押した。
恭太郎はこれからどうされるのかと琴美の様子をうかがっているが、特に何をするでもなく、動くことはなかった。琴美の鼻息だけが、恭太郎の肉茎の根元の部分に吹きかかった。
しばらくすると唇は少し離れ、またしばらくすると戻り、それを数度繰り返すと琴美は口を話して身体を起こした。
唾液に濡れた恭太郎の先端は少し包皮から顔を出して、恭太郎本人とともに琴美を少し首をかしげてみつめた。
「ま、こんなものね」
そんな気はしないけどなあ、と恭太郎はやはり思った。
映像ガイドは互いの性器を愛撫する方法として、シックスナインの体勢を紹介していた。
琴美はおもむろにスカートの中に手を差し入れ、するすると白い布を取り出した。手品でないことは恭太郎にもわかる。ベッドの端におかれたそれは、小さくくるくると丸まってはいたが、直前まで琴美が身に着けていたショーツだった。
そちらをのぞきこんでいると、恭太郎の視界がふさがれた。
「あんまり見ないで」

とはいえ、恭太郎の瞳には、琴美が大きく映っている。琴美の下半身。覆っているスカート。その中の琴美の乳白の太もも。スカートで覆われているとよくわからないが、女性のお尻というものは思ったよりも大きいものだな、と恭太郎は思った。
その根元にある暗い部分。
事前教育で映像は見ているので、女性器を見るのは特に初めてではない。だが、そこにあるのはクラスメイトの、そしてついさっき初めて身体が触れ合った女子のそれだった。かつて映像で見たときにはその構造の複雑さに驚きをおぼえたが、琴美のものは襞もそんなに発達しておらず、すっきりとしていた。
女性のそれは「濡れる」というが、特にそんな様子も見られず、肉の割れ目は琴美の表情と同じく、すましているように見えた。
「お互い、口でするの」
琴美は恭太郎に尻を向けて、そう言い残すとまた先ほどのように、恭太郎のものを口にふくみ、また離し、を繰り返した。
恭太郎も琴美に口で愛撫をし返そうとするが、琴美は腰を落とさず、寝そべったままでは口が届かない。仕方なく、ひじを使って頭を起こす。琴美の香りが強くなった。身体の内側の香りだった。
まず舌を伸ばして、琴美の肉襞に触れた。琴美は脚を一瞬こわばらせたが、それ以上の反応はない。少し顔を近づけ、唇全体でそっとふれた。
恭太郎のものから温かい感覚が遠ざかり、大きく息をつくのが聞こえた。恭太郎からは琴美の顔は見えない。
「だいじょう……ぶ?」
「うん。続けて」
恭太郎は舌に唾液をまとわせ、肉襞の双葉の間にそわせた。
「んっ!」
琴美の尻が跳ねた。そのまま高いところで止まり、琴美は恭太郎をまたぐのをやめて、座り込んだ。
「あ、ごめん……痛かった?」
「ううん。もういいと思って」
そのようには思えなかったが、琴美は映像ガイドを指差して、先に進めるよう恭太郎にうながした。
愛撫をひととおり行ったあと、実際に挿入を行えとのことだった。
琴美は黙って衣服を脱ぎ、生まれたままの姿になった。正確にいえば、眼鏡を除いて。恭太郎もそれに従って服を脱いだ。既に下着は下ろしていたので、抵抗はなかった。
恭太郎が脱ぎ終えるのを見て、琴美はベッドの真ん中に横たわった。恥ずかしがるそぶりもなく、手はまっすぐに伸ばし、何も隠すことのない気をつけの体勢だった。
医者に見せるようなそぶりだったので男心をくすぐる機微というものはまるでなかったが、琴美の身体は美しかった。なめらかな肌は、上質な酒のようにほのかに白銀の輝きをもっていた。胸はこの年としては大きめだろう。仰向けになっていても、お椀を乗せた形が崩れなかった。
腰のくびれはなめらかなカーブであり、続く下腹部は少女ながらもいずれ母となるやわらかさと曲線を潜ませている。脚はやわらかそうだが、決してだらしなく弛んだところはない。
一番目を引くのは、寝そべった彼女の中央に存在する黒い陰りだった。白紙に黒い点を打ったように、存在を主張する。さきほど恭太郎はその奥を間近に見たはずだが、こう離れて見るとまた違う感慨がある。
その髪色と同じベールはつややかに絹糸のような光沢をもち、かすかにカールしながらお互いにからまりつつ少女の秘部を隠している。恭太郎の主観だが、その量は同年代の少女と比べれば多い方なのではないかと思った。しかし下品でもなく、高価な敷物に対して自然に発する気持ちのように、毛の流れにそって撫でてみたいと思わせた。
「えっと」
眺めていても仕方がないことはわかっている。どういうことをこれからするかも知っている。しかし、恭太郎の身体は動かなかった。
「上に乗って」
命じられるまま、身体を重ねる。一番先に触れたのは、少しだけ固くなって垂れ下がった恭太郎の分身であり、ゆっくりと琴美の下腹部の黒いシートに着地させるようにした。腹から足までは身体が接したが、琴美の肩横に手を突っ張って、上半身は離れていた。
「足は……開かないの?」
「うん、このまま、して」
そう言うので、恭太郎はなんとか接合を試みた。身体の位置を調整し、件の陰りの落ち込んでいく、両足の付け根の空間に、自らのものを侵入させていく。角度をつけて、おそらくこのあたりに先ほどの肉の割れ目があるだろうと思われる場所に先端をあてがい、腰を動かして押しこんだ。
だが、柔肉にやんわりと抵抗を受けるばかりで、恭太郎が押し入っていくことはなかった。無理に力を入れると、琴美は言葉にしないまでも眉にしわを寄せた。
それを何度か繰り返したが目的は果たせず、恭太郎はいったん琴美の身体からおりて、琴美と同じ方向に寝そべった。
なぜか涙が出そうになった。自分がうまくできないことも、琴美に対してもっている気持ちがよくわからないことも、琴美の頑なな態度も、そんなものが混ざり合って、恭太郎を悲しくさせた。
「聞いて、もらえるかな」
鼻をすすりながら、話しかけた。
「あ……うん」
顔は見ない。二人とも天井を向いている。
「僕さ、あのリスト、あるじゃない。相手の、希望を書く」
「うん」
どことなく、琴美の声は先ほどとは違っているように思えた。緊張を解いたようでもあり、不安なようでもあった。それは、物陰から様子をうかがう動物に似ていた。
「あれ、一人しか書かなかったんだ」
誰の名前を、ということは言わずもがなだった。誰か一人の名を書くということは、相手は二つのパターンに限られる。その書いた相手になるか、相手の意向にそわず指導員になるか、だ。
「え」
琴美は驚いたようだった。恭太郎は瞼ににじみ出てきたものがこぼれてしまうので首を動かせなかったが、琴美がこちらを見たのがわかった。
「ごめん。それだけ、言っておきたかったんだ」
「……私も、一人しか書いてない」
「え」
恭太郎の首は、思わず動いた。両目からこぼれおちたものが、頬を伝ってシーツに落ちた。
恭太郎と琴美がこの部屋にいるということ、そして琴美が一人しかリストに書かなかった、この二つの事実が導き出すことは、琴美が書いた人物というのは、恭太郎以外の誰でもない。
「うん、長塚くんだけ……いや、その……」
さっきまで、ほとんど命令口調だったものが、急に琴美は口ごもるようになった。同じく、一人しか書かなかった恭太郎には、その意図するところが何となくわかった。
「うん。あんまり、こうやって無理やりに……その、させるって僕は納得いってないんだけど、もし小里さんとだったら、まだ『ある』な、って思えたんだ」
「……そう。でも、私は……こんな、だし」
こんな、と表現する内容は、恭太郎にはだいたいわかる。馴れ合いが下手で、人に自分の弱みを見せたからず、それがゆえに高圧的な態度になってしまう。
だが、例の忘れものの一件で、恭太郎は琴美の、その殻の内側にある彼女の弱さや不安を見た。それを恭太郎は、好ましい感情でとらえた。同情ではなく、小さく咲いた花を見つめるような気持ちで。
「あ」
思わず、気づいた驚きに恭太郎は声に出てしまった。それこそが、まさに「好き」だという感情ではないのか。何かしてやりたい、助けになりたい、気持ちをわかりたい。
「ながつか、……くん」
琴美とて、義理や消去法で、恭太郎の名前を書いたわけではない。
やはり、あの一件は嬉しかったのだ。貸してくれたことはもちろんそうだが、それを琴美が忘れたことにせず、恭太郎が自分のこととして引き受けたこと、その気づかいが嬉しかった。自分の気持ちを理解してくれようとしたことが嬉しかった。
琴美は、それを恭太郎が「いい人」だからだと勝手に結論づけていた。そこに、琴美個人をどうこうという意識はないものと思っていた。
二人が、お互いの名前を一人だけ書くという行為は、お互い好きあっていたことの証左だった。
向き合った琴美の目からも、恭太郎と同じものがにじみ、こぼれ落ちた。
琴美はそれを隠すように顔を近づけ、額を恭太郎に触れさせた。
恭太郎は身体を倒して琴美のほうを向くと、手を回した。割れ物を丁寧に包み込むように、優しく。琴美もこちらに身体を向け、恭太郎と同じように手を伸ばして、二人は身体を寄せ合った。
