天使召喚師・理恵 邪神との淫戦記                        作:天旗 紅道  第一章 あらわる! 女の淫気を食らう妖獣 「匂いが、するね」  夜道を歩く少女がそう声を発した。  植物性の匂いが、かすかに空気に混ざっていた。  街灯はついているがまばらで、家もそう密集していないのでそこからの光も期待できない。  彼女はひとり、そんな道を歩いていた。  名は、浅井《あさい》理恵《りえ》という。横から見ると刃物を思わせるような、鋭い角度のストレートボブが彼女を印象づける。さらに猫科の動物のような吊り目がさらにクールさをひきたたせている。  横顔は、鼻筋からみずみずしい唇、あごに至るまでのラインが細いペンでさらりと描いたように整っていた。  歩く右の手には、鉄柵が続いている。その柵をはみ出して手入れのされていない木々が葉を伸ばしているが、その中をうかがうことはできる。何か建物があるようだが、人の行き来もなく明かりも見えない。長い間使われずに放置されている施設だろうか。 「この柵の向こうからか」  少し上を向いて声を出すが、やはりそれを聞く相手は見つからない。  理恵は足を速めて柵の切れ目を探した。下着ぎりぎりの長さのプリーツスカートが危うく揺れる。豊かな尻肉がスカートをまるく突き上げ、露になっている太股はむっちりと瑞々しく、暗い中でもその白さがわかる。  スカートと同じ濃紺のブレザーを彼女は羽織っている。胸元に赤いネクタイがのぞいている。学校の制服だろう。左肩のところには、校章らしきワッペンが見える。  匂いが、かすかながら強くなっていった。甘いようで青臭さのまじったような、熟した果実を思わせる匂いだった。  ようやく理恵は鉄柵が崩れたところを見つける。人が容易に通り抜けられ、地面は踏みつけられたあとがある。地元の人間にとって、近道に利用されているのかもしれない。  ためらいなく中へと入った。さっきまで歩いていた道も暗かったが、さらに暗い。  携帯電話を開いて足元を照らしていたが、理恵はもっといい方法を思いついた。 「こういう時に──使わないと損よね」  手のひらに向かって、意識を集中させる。彼女は自身でこの行為を、「素《そ》」を集めると呼んでいる。「素」は彼女の手のひらに集まり、そしてゆらめく炎となった。  これが、彼女のひとつめの能力だった。ひらたく言うところの「魔法」であり、具体的には「火を操る能力」になる。彼女がこんなところを夜中に歩いているのは、そのあたりに理由がある。 「うん、ん……ん……」  嗚咽のような、くぐもった女性の声が聞こえた。断続的に、建物のほうから聞こえている。 「ち、やっぱりもう現れてたか」  遅まきながら理恵はその声のほうに向かって駆けた。  近くで見ると、建物は両翼を伸ばしたように横に長かった。大きな車寄せもあり、かつては立派な建物だったのだろう。  しかし、その車寄せのところには、日常から逸脱した生き物が根を下ろしていた。  字どおり、それは「根」を地面に這わせていた。一見、巨大な植物のようにも見える。だが、その生き物の幹のような部分からは枝ではなく触手が伸びていた。  触手は人間の腕ほどの太さで、粘液におおわれているのかテラテラと光を放っていた。 「ドルアーガに出てきたな、こういうの」  理恵はレトロゲーマーなので、表現が古い。  その(古いゲームに登場した)ローパーもどきの生き物は、その触手で女性をひとり捕らえていた。  触手生物には目に相当する器官がないようで、近づいてきた理恵にも気づかないようだった。忙しくうごめき数えることも難しい触手で、女性の腕や足をからめ、身動きをできなくしていた。 「ん……くはぁ……ん! んっ……」  女性も理恵が近づいてきたことに気がついていない。  年のころは二十代前半だろう。スーツを着ていたと思われるが、女子大生が就職活動中なのかもしれない。「思われる」というのも、彼女はすでに体に衣服をほとんど見につけていなかった。ブラウスの断片がわずかに肩にかかり、紺色のスカートもベルトで守られた腰のところを残すのみだった。  理恵の見た目の読みはおおむね当たっていた。  女性は小岸加奈子《こぎしかなこ》といい、大卒で今年から勤め始めていた。いまやボロボロになったスーツは着始めて間もないものだった。  加奈子は家路の途中で、ここを抜け道にすれば早く家に着けることを知っていた。普段はあえて踏み入ることはなかったが、今日は仕事で遅くなってしまったのでここを通ることにした。それが、この結果となった。  とびきりの美人というわけでもないが、加奈子は人好きのする顔をしている。だが今は恍惚に頬を染め、つき上がってくる快感に半開きの口からはだらしなく唾液を垂らしている。時折、耐えようと歯をくいしばろうとするが、絶え間なく女性器に押し入ろうとする触手の動きによって、そのわずかな抵抗も散らされる。 「あううう、はう、はう、ああああ」  同性ながら、その淫らな姿に理恵はのどを鳴らす。  ──すご……あんなに太いの入っちゃってる……  一般的な男性のもつモノよりもひとまわりは大きいだろう、理恵の腕まわりぐらいはあると見える。その太さのものが、水を勢いよく流したホースのように暴れまわっているのだが、加奈子に痛そうなそぶりが見えない。十分すぎるほどの量の粘液がローション代わりになっているのだろうか。  ついこの間、ネットで偶然見つけた獣姦ものの動画を理恵は思い出した。あれは犬だったが、犯されている女性に構わずにひたすら激しく腰を打ちつけていた。この理性のない動きはそれを想起させる。 「いやぁぁぁ、いや、いあ、ぁっ、あぶ、あ、もうだめ、も、あ、だめだめだめ、あ、ひぃやあああっ、ああはふ! ふぃいいやぁ!」  ぶっちゅ、っつちゅぶ、ぷっちゅぷ、ぶっ、ちゅっぶうっ。  触手が女陰をむさぼると、そのたびに穴が開いたパイプのように触手のまわりから液があふれて、ぼとぼとっ、と地面を叩く。  触手が分泌しているものと、加奈子が自ら垂らした液体との割合は判別できなかったが、それでも地面に水溜りができるほどの量である。  鳥類が餌をついばむように、その動きは執拗だった。ねじれるように突き入り、汁を四散させながら何度も、何度も前後動を繰り返す。 「は、いやぁ、へぐ、えぁ、あ、ああああぁ、うぅ、うぅぅあ、やめてよ。やめてぇえ! はぅぅん! はわ、ひぃぃぃぅう!」  まれに、触手がその先端の形を垣間見せる。キノコを容易に連想させる、男根を極度にデフォルメした大げさな張りが、淫水をかき出す役目を果たしているようだった。 「やだよう、ふぁっ、もう……んっ、ああ、いやぁああ、ん、ん! あああ、あっ、またイく、またイっくぅっ!」  空で、加奈子は身体をのけぞらせた。これが数度目の絶頂だった。  同期するように、加奈子の秘部に埋没していた触手も激しくうねり、いったんピンと張ると白濁液をおびただしく垂らしながら抜け出てくる。  射精とよく似た現象だったが、その液には媚薬のような効果があるようだった。  つい先ほどまで処女であった加奈子の破瓜の血はすっかりその液で洗い流され、その痛みもすぐに快感の麻酔で霧消させてしまっている。 「はぁ、は……くふぅぅああっ! また、あっ、またくるぅ……」  加奈子に休む間も与えず、次の触手が侵入と蠕動を開始する。同じことの繰り返しのようでもあるが、加奈子の反応が次第に変化を見せている。  やはり触手の吐く液の効果なのだろう、理恵がここに着く前にはただ痛みに耐えてこわばるだけだった加奈子の身体は全体的に紅潮し、乳房もかすかに赤みが差し、誰の舌も触れたことのない乳首は伸びんとばかりにツンと尖っている。  触手の液のほうがあまりに量が多いために判別がしにくいが、加奈子自身から秘部を潤わせている。彼女の足を地面に向かってつたう幾筋かの流れは、陰部が望んで流す愛液だった。 「あ、あ、いっぱいなの、いっぱいはいってるの、あ、いひぃぃ、あん、あぁああん」  加奈子の悦びの声。  彼女がこれを望んでいるかのようにも見えてきたが、理恵はこのまま放置した場合、加奈子がどうなるのかを知っている。  とある人物からの指令。  連続で起こっている、女性暴行事件。  現場に残されるのはおびただしい白濁液と半裸の女性。白濁液が人間の精液とは成分が違い、バケツですくうほどの量があることから、普通の強姦ではないことはすぐに判明した。  そして事件は公にされず、しかるべきルートを経て理恵のもとに情報が提示された。  女性ばかり襲われる。  一見、性交のような痕跡。  人でないものの所業。  そして、被害にあった女性は精神的に大きなダメージを受け、ほぼ全員が意識不明にまで陥る。一部の例外は、死に至った。 「けっこう見ものだけど、そうも言ってられないか」  理恵は「素」を集め、手のひらに炎の玉をかたちづくる。同時に、ローパーもどきを睨み、攻撃点を探す。動かないので狙いはつけやすいが、いかんせん人質のような形になっている加奈子に当てるわけにはいかない。 「そこっ」  野球のボール大の炎の玉ができあがったところで、「根」にあたる部分に向かって投げた。狙い過たず怪物の足元にあたったが、小さな火柱をあげただけで、特に反応はない。  粘液で厚くコーティングされているから、火が効きにくいのか。  試しに他の場所にも打ち込んでみるが、大差はない。理恵の予想が裏打ちされただけだった。この怪物を倒すだけなら、そのコーティングをものともしない火力を撃ち込んでやればいい。それだけの力を理恵は持っていた。ただし、そのときは加奈子も消し炭になってしまうだろう。 「馬鹿とハサミは使いよう……ってことで、馬鹿を呼ぶか。──おいで、メル」  理恵がそう虚空に呼びかけると、一陣の風が通り抜けた。  ふわ、と数枚の羽が舞い散る。その羽が降ってきたところを見上げれば、空間を切り裂くようにして白鳥のような大きな羽が生えてきている。かすかな光を増幅するように、それは照り輝いていた。  次第に大きくなり、羽は人の大きさぐらいまでになる。大きな二枚の羽は何かを包み込むように閉じていた──が、突然とはじけるように開いた。 「ぽぽーん、呼ばれてとびでてー、じゃんがりあーん」  姿を現したのは大きな羽を背中から生やした少女だった。純白の羽に負けないほど輝きをはなっているつややかな黄金の髪が液体のように流れる。レオタードに似たような衣装に身を包み、肌は露わだった。股間の部分は限りなく鋭角で、尻肉は覆いきれていない。  それを少しでもカバーするように、半透明のひらひらしたスカートのようなものが垂れているが、まだセロハンのほうがましに思われる。  小判大の青い宝石が胸の中心に位置しており、そこを谷として両側から立派なカップ状の乳房の山が、白い生地をパンパンに張らせている。  そして彼女の属性を明らかにするものが、頭のいただきに輝いていた。天使の光輪である。 「ジャンガリアンはハムスターよ」  大仰に現れた天使に、驚くことなく理恵はそう誤りを指摘する。 「てか馬鹿はひどいよー、まだハムスターのほうがいい」 「じゃあ帰ったらメルの餌はひまわりの種な」 「ぷぷぷぷーん、じゃあ理恵ちゃんがこないだ買った、すっぱチップス食べちゃうからね」 「あ、あん、あ、あ、いや、またぁ、あ、いっ、イ、イくイくイくぅぅっ!」 「理恵ちゃん変な声出してー。エッチ」 「私じゃないって。忘れとった」  説明の必要はないが、嬌声は襲われている加奈子のものである。  空を羽ばたきもせずにふよふよと浮かんでいる天使から、理恵は目を転じた。  加奈子は達した後も途切れることなくまた喘いでいたし、怪物もその触手を休めてはいなかった。 「すっぱチップスあげるから、ぱぱっとやっちゃって」 「はいよ! ぱぱらぱー!」 「そんな古い掛け声はいらんから」  メルと呼ばれた天使は、手を大きくぐるりと回すと自分の背よりも大きな棒状のものを手にした。その先には大きな刃が突き出ている。古の武将がもっているような、人をも一断できそうな大きな得物である。  何十キロとするであろう白銀の斧槍を、天使は軽々とバトンのように数回転させた。 「ではっ」  宙を蹴ると、槍の穂先を怪物に向ける。放たれた矢のごとく、白い光の筋となった天使は、怪物の頭頂部(頭というのが正しければ)を貫いた。  理恵は怪物が暴れて、囚われた加奈子に危険が及ぶのではと心配したが、怪物は痛覚がないのかそれには反応がない。  すばやく穂先を抜き取ると、緑色の体液がほとばしった。大きく斧槍をまわしてその体液を落とすと、斧の部分を下にして大きく振りかぶった。  ばつ、と手ごたえのある音とともに、触手が数本まとめて断ち切られる。快刀乱麻を断つのごとく爽快感さえ覚える。  手元の狂いはなく、次々と囚われの加奈子にからみついた触手が断ち落とされていく。天使の腕をよく知っている理恵は、危なげなくそれを見守った。むしろ激しい動作で天使の身に着けているレオタード様の衣装が尻や股間に食い込んでいくのを危なげだと思った。  ──誰も見てないからいいけどさ。  すばやい動きで触手という触手をあらかた断ち切ると、怪物の足元はその断片で埋もれた。断片もまだ生きているのか、巨大なミミズのように地面を緑色の汁をにじませながらのたくっている。 「これで──救出っと。あとは理恵ちゃんやる?」  最後に残した触手を刈り取ると同時に、加奈子のからだを天使が受け取った。 「ん。そうする」  ずっと見ているだけだったので、手を出したかったところだった。両手を使って深呼吸をするように「素」を集める。両手にドッジボール大の光球が出来たところで、火力を調節せずにそのまま──放った。  どうふううううううっ!  光球は怪物のどてっぱらに吸い込まれるように打ち込まれ、そして大きな火柱を上げた。一瞬のうちにかすかな灰へと化す。あとには子供が花火を遊んだ後のように、かすかな残骸しか残さなかった。 「ふん。でかすぎて的にもならないわ」  ぱんぱん、と手をはたいて踵を返す。 「おみごとおみごと」  天使もぱちぱちと手を叩いて、大仰に迎えた。傍らにはさきほど助け出した加奈子がいる。どこからか出したのか、大きいバスタオルの上に横たえられていた。 「どんな感じ」 「気は失ってるみたいだけど、大きな怪我はないみたい。無理やりにされたから──少し傷はあったけど、そっちは治してるから」  見ると、天使は加奈子のそこかしこに手をかざしている。簡単な傷の治癒を早めるのも彼女の能力のひとつだった。 「だったら、後は任せたほうがいいか」  理恵はブレザーのポケットから小さな笛のようなものを取り出した。少し空を見て、勢いよく吹く。  音はまったくしなかったが、天使は耳を抑えていた。 「あううう、ひどいよ理恵ちゃん」 「これ犬笛よ」  人間には聞こえない周波数のはずだが、と思っては見たが、やっぱり犬並みってことか、と理恵は逆に納得した。  しばし。二、三分ほどすると、頭上からばっさばっさと音がした。  理恵の頭のほうから吹き降ろす風。短いスカートが舞い上がるのを手で押さえる。  次第に風が強くなり、その風の正体も姿を現す。  夜の空に溶け込む、巨大なカラス。その背に人が乗れそうなほど──実際、その背には男がひとり仏頂面で座っていた。  座っていても長身とわかる。フレームの細い眼鏡をかけ、短く刈り上げた髪は軍人のようでもある。 「預かろう」  彼は特に説明もされないうちに、いままでの経緯を見ていたかのように穏やかに言った。 「国松さんも犬笛が聞こえる奇特な人なんですか」 「僕は普通の人間だからね。でも耳役はいくらでもいるわけだよ」  まだ気を失っている加奈子を引き取ると、片手で器用に抱えて、もう片手でカラスの首筋を撫でた。 「ぼんくら所長さんには明日あたり報告に行ったらいいのかしら」 「どちらでも。あいつへの報告に意味はないだろうけど、暇にはしてるから困りはしないだろう」  そんな短いやりとりの後、カラスは舞い上がり闇夜の空にとけていった。 「さて、帰るよメル」 「うん。帰ったらすっぱチップスね」 「そういうことだけ覚えがいいね。──ん」  理恵がその場を立ち去ろうとしたとき、なんとなく振り返ってもと怪物がいたところを見た。  理恵の炎に焼かれて、大小の焼けかすが散らばっていたが、そこに乳白色の小さな塊があった。石のようではなく、むしろ陶器に近いつやを持っている。  理恵は少し考えた後、ほこりを吹き飛ばしてポケットに入れた。  先に軽くふれたが、理恵は平凡な少女ではなかった。  力を持つ者。その力を知る者は「位格《いかく》」と呼ぶ。  神秘思想では、「生命の樹」あるいは「セフィロトの樹」というものがある。これは円と線で構成される図形的には単純なものだが、その解釈は深く、神の力や世界のすべてを表すとされる。  十ある円をセフィラといい、それらを繋ぐパスは二十二本ある。  セフィラはそれぞれ意味と属性を持ち、関連した力をもっている。これは人と合致することで「位格」と呼ぶ力となる。セフィラの持つ意味と、その人間のもつ性質・人格・才能があわさることで、「位格」は特別な力をもつことになる。  理恵のもつ「位格」は「ビナー」。理性、理解を意味する第三のセフィラだ。  この能力によって、彼女は俗に「魔法」と呼ばれる術を使い、そして天使を召喚することができるのだった。  力ある故に、彼女は別の力あるものに立ち向かうこととなる。  この物語は、そんな彼女の闘争の断章である。 第二章 相性バツグン!? パートナーは守護天使 「なんだろこれ」 「にゃむがにやむが」 「もの食べながらしゃべりなさんな」  理恵はさきほどの現場に残されたものを、ベッドで寝そべりながら眺めていた。  ほどほどに堅く、それでいて重くはない。手のひらにおさまる程度の大きさで、乳白色。  さすがに舐めてみようとは思わないので、味は分からない。どうしても困ったら横ですっぱチップスをむさぼりくっている天使に舐めさせようと考えた。  天使の名は、メルクトゥーリエルという。長いので理恵はメルと呼んでいる。いまは部屋着に着替えて、ぶかぶかのセーターをかぶっている。羽根も隠れるので、髪が流れるような金髪であることと頭上の光輪以外はそう目をひく姿ではない。  経緯はいろいろあるが、こういう共同生活を送っている。その経緯についてはまた語られる日もあるだろう。  天使にもいろいろ種類はある。上級の天使になると頭や羽を複数もつケルビムのような異形のものもいる。  だが頭上の光輪、背中の白い羽などはメルも一般にイメージされる天使とそう違いはしない。人には誰にでもついているとされる守護天使というものである。俗にいわれる守護霊の天使版と考えても大きくは違わない。  理恵自身、炎を操る魔術師ではあるが、守護天使を具現化して使役できる、というのも彼女の力の一端というわけだ。 「どっかで見たことがあるような気がするんだけどね」 「あたしあるよ」 「まじで」  理恵はぶらぶらさせていた足に反動をきかせて起き上がった。 「フライドチキン食べたらそういうの出てくるよね」 「ポンジャンはアノアーアアアアーー」 「なにそれ」 「昔のCMよ。脱力しすぎて記憶の扉が開いたわ。──まあ、あんたのことだから食い物関連だと思ったけど鶏の骨はないだろ」  絵柄に車と船と飛行機があるんだよな、などと年に似合わない回想をしていて、メルの言った骨という言葉にひっかかった。 「骨、骨」 「ホネロック」 「あんたまで懐かしごっこにつきあう必要ないから。でも骨ってのはそう外れてないかも」  理恵は起き上がってベッドの横に積み上げてある本のひとつを引き抜いた。ずがずがずがとその上に積んであった本が崩れるが気にはしない。  あぐらをくんでその上に本を乗せると、ぺらぺらとめくり始めた。  飾り気のない白の木綿の下着があぐらを組んでいる間から見える。理恵の豊かな尻肉が下着をピンと張らせて、その隠しているものの形を浮き上がらせている。生地が薄めなのか、奥のかげりもほのめかせている。 「理恵ちゃん、パンツ見えてるよ」 「あんたしか見てないからいいのよ──あった」  本の中ほどに、彼女の探していた写真が見つかった。手にしている白いものと見比べてみる。 「似てる。確証はないけど」  真珠を思わせるような光沢がかすかにある。写真にうつっているものは豆つぶ大の大きさだったが、形もそれとなく似ている。 「ほとけ・・・しゃ・・・り?」  横から覗き込んだメルがその写真の説明を読んだ。「仏舎利」と書かれている。 「ぶっしゃり、て読むの。お釈迦様の遺骨ね。世の中にある仏舎利を集めれば何トンにもなるとか言われてるけど」 「お釈迦様って怪獣ぐらいの大きさだったん? ぐがーって火を吐いたりする?」 「あんたも神のお使いなんだから滅多なこと言わないの。まあ偽モノとか、本物の前で供養をした宝石が代わりになったりするわけよ。モノがモノだけに、大切にしまいこまれているし、本物がどこにどれくらいあるかは薮の中。インドとかタイとかではストゥーパっていう塔に納められたりしてるけど、日本ではあんまりメジャーなもんではないの」  こういう説明をすることに理恵は淀みない。小さい頃からこういった書物に親しんだ成果である。 「まあ、鑑定はあの人に頼もうか」  目当てはある。調べ物に関してはまず任せて間違いない。これが仏舎利とわかったらどうというわけでもないけれど、理恵はとりあえずひっかかることを解決しておきたかった。  これはひとまず保留とつぶやいて、理恵はハンカチにその仏舎利(未鑑定)を包んでテーブルにおいた。  同時にそばにある時計に目をやる。もう日付が変わろうとする時間だった。 「さて、お風呂入って寝るかな」 「えええー」 「何よ。まだなんか食べたりないの」 「うん、理恵ちゃん!」  メルはそう言い放つと、暴れ盛りの仔猫のように理恵にとびかかった。不意をつかれて理恵はベッドに倒れこむ。  間髪いれず、メルは理恵の後ろに回りこんで、今度は犬がするように自分の腰を理恵の尻のところに押しつけ始めた。理恵の短いスカートはめくれあがって、下着のこんもりと盛り上がった部分のやわらかさを確かめるようにメルは股間をすりつける。 「ちょっと、やめなさいよ。サカりでもついたの?」 「そうなの。わんわん。ほら触ってみて」  強引に導かれた理恵の手が触らされたものは、メルの股間でふくらみを見せているものだった。下着とスカート、そして厚手のセーターの上から触ってもその熱さと硬さがわかる。 「なんで、こんなになってんのよ」 「さっき理恵ちゃんのパンツ見ちゃったもん。太股がむちむちしてたし、くいっとあそこに食い込んで割れ目になってたし、そしたら元気になってきて」 「男子中学生みたいにエロいことばっかり考えてないでよ」 「食べることも考えてるよ。でもいまは理恵ちゃん食べるの」  メルは首を伸ばして、理恵に顔を寄せた。舌を尖らせて、耳の穴にすべりこませた。 「ひあん……ん……なにすんのよ」 「理恵ちゃんの食べかたー、まず力を抜かせまーす」  料理番組のように宣言し、執拗に耳を責めたてた。耳の外側にそって舌をはわせ、耳たぶをこりこりと甘噛みする。目に見えて理恵の抵抗は弱まっていく。 「次に、理恵ちゃんの大好きなものを取り出します」  メルは寝転がったままセーターとスカートをいっしょにまくりあげた。小さくレースのあしらわれた下着が露になる。その小さな布地で抑えきれず、同時に股間で猛っていたものも半ば露になった。  天使には男性女性の区別がない。人間とは違う存在であるからして当然ではあるが、メルの場合はおおむね外見は女性である。しかし下着から抜け出そうとでもするように屹立したそれは、まごうかたなき男性器だった。少女趣味のショーツからはみでる陰茎はいかにも異質で、暴力的なものを感じさせた。  白い肌に相応するようにメルの亀頭はほのかなピンク色で、鈴口からにじみ始めた汁がてらてらと光っている。カリの部分は大きく張っていて、女陰を激しくかきまぜることが想像できた。根元には、彼女の髪と同じ色の陰毛が軽くカールを描いて若草のように茂っている。 「理恵ちゃんのココの具合をみてあげるね」 「あ……そんなとこにグリグリしたら」  メルは亀頭を理恵の下着のこんもりと盛り上がった部分に押し付け、腰全体をグラインドさせた。その点を中心に下着が食い込み、ショーツの裾から陰毛がこぼれる。 「ふにふにしててやらかい……それにすっごく暖かくて、こうやってパンツに擦りつけてるだけで気持ちいい」 「ん、ん……メルの、すっごく、かたい……」 「理恵ちゃん、聞こえる? ちゅく、ちゅく、って音してるの」 「そんなの、聞こえない」  強情を張ったものの、その音は理恵の耳にも届いていた。外からはメルの陰茎の先からにじみ出る汁が、中からはさらに勢いよくこぼれ出す愛液によって木綿の生地を濡らしていく。  ショーツが吸いきれなくなった二人の淫液が、理恵の性器の表面であふれかえって水音をたてていた。 「やっぱ理恵ちゃん、濡れやすいよね。ちょっとおちんちんでグリグリしただけでこんなだもん」 「ちょっとじゃ……ないでしょ」 「ふふん、ちょっとだと嫌なんだ」  メルは含み笑いを浮かべると、理恵のショーツを突き破るように陰茎を押し込んだ。淫液を吸った布地は、理恵のみずみずしい性器に入りつくようにして、その肉襞を浮かび上がらせる。そこから聞こえる水音もぐちゅ、ぐちゅと大きくなった。 「あっ、ん……こんなの変、パンツ、ダメになるから」 「それじゃあ、脱いじゃおうね」  言質をとったとばかりにメルの動きは素早かった。体勢を入れ替えて、理恵の下着に手をかけた。  熟れた桃の皮をむくように、するりと尻から剥ぎ取られる。  片足から引き抜くと、もう片方からは外さずに足首にひっかかるかっこうになった。それ理恵の大きめの尻から離れるとほんの小さな布切れになっている。  メルは足の閉じられる前に、頭をひざの間へと滑り込ませた。同時に、メルの股間で猛っている陰茎がはねて、理恵の鼻の頭を叩いた。 「や……もう」 「理恵ちゃん、自分で見てみたくない? なんかもう、すごいことになってるよ」  理恵の肌は静脈が目立つほど白い。陰毛はそれに反して濃いほうなので、恥肉の鮮やかな色もあいまっての彼女の股間のコントラストは目に映える。  その黒い茂みをそっとメルが手でかきわけると、恥部が大きく露出し、まわりの陰毛までテラテラと光っている。愛液を露のようにまとわせているからだった。周囲だけでなく、その液を溢れ出させている部分も、襞の合間に小さな水溜りをつくっていた。 「──じゃ、いただきます」 「ん! はぁ、ぁぁっ」  舌を尖らせて、件の雫をすくうようにする。同時に、陰唇を舌先がかするようになぞって、今日はじめて陰部を直接触られた快感に理恵は震えた。  ちゅっ、じゅじゅっ、ちゅうっ。 「理恵ちゃんのやらしい匂いのおつゆ、いっぱい……。ね、あたしのも」  メルは熱く火照る陰茎を、理恵の顔に突き出した。口に入りたがるように動き、すでに先走った液で理恵の顔をなめるように汚していく。 「待ってよ……、私もするから」  のたうちうつメルの陰茎をつかむと、理恵は舌で口の中を湿してから、メルを迎え入れた。独特の匂いとほんのり塩辛いような肉棒の味を感じる。  平均的な日本人の男性のペニスと違って、メルのそれは少し大きく、しかしカチカチにまで硬くはならない。理恵も現物を知っているわけではないが、ビデオなどで見る外国人のそれに似ている気がする。  メルのものは最高潮に勃起している状態だが、柔軟性があって口の中で少し曲がったりもする。その感触を楽しんで、メルは口の中で転がした。 「あはぁ、理恵ちゃんのお口のなか、あったかいよ……ちゅっちゅして。ちゅっちゅ」  その要望にこたえて、理恵は忠僕を示すかのように丁寧に口で奉仕した。  はじめはゆっくりと唾液を陰茎の全体へまとわせるように、舌をまとわりつかせる。次第に唇をすぼめて、雁首を中心に刺激を強めていった。  んぷ、つぽっ、むぷっ……  メルも口は休めず、理恵の陰唇への刺激を与え続けている。それがときおり、理恵の口の運動を止めさせる。 「うんふうっ、や、そこだめ、だめだめ」  陰唇への刺激は慣れてきたので、心地よい程度の快感になった。しかし陰唇を這うメルの下や唇は秘肉が重なり合う、皮のフードとなったところにも到達した。フードからは小さなピンク色のつぼみがのぞいている。 「だめ。だめってのがだめだからね」  メルは指で陰部の上部をひっぱるようにして、その部分を露出させた。つぼみは探されるのを待っていたように、愛液で自らを照からせて新たな刺激を待った。ふっ、とメルは息をふきかける。 「あ! やあ、だめ、だめだって。そこされると、ほんとに、おかしくなるから……」 「おかしくなっても、いいの」  つん、と挨拶がわりに舌で突く。次に唇でやさしく吸うキス。 「あ、んん! いぃん! あぁ、はぁぁぁあっ!」  それだけでも理恵の体は激しい快感におそわれて、びくっ、びくっと小さく痙攣した。 「可愛いよ、理恵ちゃん。あたしその声好き。いやらしい理恵ちゃんの声好き」  それから唇を押し付けて果物の汁を吸うようにして、最後には舌で嘗め回すと、理恵は体を大きくのけぞらせた。淫欲の沼に沈み込んでしまうのを逃れるように。 「ん! もうだめ、だめえ、ん! ぅん! いやぁあ、いやあっ!」  メルはそれを許さない。理恵の尻を抱え込むようにする。 「イっていいよ。つかまえててあげるから、びくびくってして、イって!」  ちゅっ、ちゅうううっ、ちゅぶっ! ちゅううっ! 「あ、あ、いやっ! イ、いい、イくうっぅ!!」  いままで抑えていたものを解放するかのように、大きな淫声をあげて理恵は達した。すっかり力が抜けてベッドへ沈み込む理恵に、メルは再び体勢を変えて同じ向きになると、いとおしいように優しく口づけをした。 「すごく……可愛かったよ、理恵ちゃん」 「はあ、ふうん……」  まだ理恵は恍惚として、メルと言葉を交わすことは出来なかった。メルはくすりと笑って、理恵の頬やおでこにも柔らかなキスを続けた。 「メル」 「ん?」 「おかしくなる、っていったのに」  まだオーガズムの余韻が支配しているのか、理恵のことばはたどたどしかった。 「可愛いんだもん」 「んー」  普段の理恵とメルの立場からすると、使役するものとさせるものの位置関係なのだが、「行為」の後ではお互いに甘えを見せるような関係に変わる。理恵のすねるような表情も、こういうときにしか見られないものだった。 「ふふ」  メルがふたたび口づけをすると、理恵のほうから口を開き、メルの舌を導いた。お互いに舌を相手の口に侵入させ、内部を探るように舌を動かし、敏感な粘膜をなぞった。まだお互いの愛液の味が口の中には残っている。愛液の味の残る唾液を二人で共有しようとしているようだった。  濃厚なキスをしばし続けていると、理恵がメルの股間へと手を伸ばした。 「理恵ちゃん?」 「出して、ないんでしょ」 「いいの、して?」 「許可を聞く必要なんかないわよ……私がしたいんだから」  語尾をぼそっと小声にする。メルには聞こえたが、もう一度聞き返した。 「理恵ちゃんが、どうって?」 「いじわる」 「じゃあ、ごにょごにょして。でも、えっちな言葉で」  メルはそう言って、耳を貸す。 「メルの……ちんぽ……欲しいの」 「欲しいって? どうしたいの」  理恵はメルの耳を遠ざけ、半分やけになって大きな声で言った。 「メルのおちんぽ、入れて欲しいの! クリだけじゃ足りないの! だから、メルのおちんぽで私のぐちょぐちょおまんこに入れて!」  理恵は首まで真っ赤にした。 「……あたしも、入れたいよ。ぬるぬるの理恵ちゃんのおまんこに」  理恵の精一杯の卑語に、メルは褒めるように笑った。  脱ぎかけの衣服をすべて脱ぎ捨てて、ひたりとも全裸になる。メルは輝くような白さがまぶしいほどだが、理恵も劣らずクリーム色の肌が触らずとも滑らかさを感じさせる。  胸のほうはメルの圧倒的な大きさに理恵はとても及ばない。しかしお椀型に丸い理恵の乳房は形よく、ツンと勃った乳首はメルの巨乳に対して淫猥さは劣っていなかった。  まずは理恵が下になって、メルを迎え入れる体勢になる。理恵はMの形に足を開き、自分の性器がどれだけメルの陰茎を待ち望んでいるかを晒した。自らその部分を指で開くと、またこんこんとあふれ出した愛液がこぼれてシーツに新しいしみを作った。 「すぐに、入れられるよ」 「じゃあ……いくね」  その結合を大切にとっておくように、ゆっくりと体を重ねる。上になったメルの豊かな胸が垂れ、性器より先に理恵の乳首と触れた。ん、と二人同時に声が漏れる。  すぐに、二人の性器が触れ合った。待ち望んでいた邂逅に、その先の快感をふたりとももう先延ばしにできなかった。  ぐにゅううううううううっ 「ふああああひああっ」 「あはあああっ!」  同時に腰を押しつけあったために、一気にメルのペニスは理恵の肉壷に飲み込まれていった。理恵の膣内が十分に潤っていたのもあって、吸い込まれるように一番奥まで達したのだった。 「いまの、すごかったよ、理恵ちゃん……」 「うん、メルの、すごい奥まで入って……お腹のなかいっぱいだよ」  しばし、急激に訪れたしびれるような快感に呆然とする。それでも理恵の肉壷は生き物のようにうねり、メルがピストン運動を始めるまでもなく、次なる刺激を性器に与え続けていた。 「メル、して……いっぱいして……メルのちんぽで私のいやらしいところ虐めて」 「するよ、いっぱい、理恵ちゃんのおまんこ、かきまわしてあげるから」  ぐっ、と腰を引くと、メルの突き入った肉棒を逃がさぬといわんばかりに理恵の肉壷が収縮した。雁首を理恵の幾重の肉襞がなめつけていくが、それにも耐えて抜ける一歩手前ぐらいのところまで大きく引きつけた。  大きく動きたいのをひとまず我慢して、入り口の近くで小さく出し入れをする。  くぷ、くぷ、つぷっ、つぷっ、つぷっ、くぷっ。  二人とも、激しい快感におぼれる前に、この淫靡なコミュニケーションを長く楽しみたかった。小刻みな動きとともにメルの乳房が揺れ、二人の乳首が擦れあう。背伸びをするように二人の四つの乳首は競い合うように硬くしこり、勃って高さを競った。 「ん、んんっ、あふん……気持ち……いいよ。メルの、熱いの」 「理恵ちゃんの中も、んんっ、すっごくあったか……体温、いっぱい、ん、んふう、感じるの」  少しずつ、快感の度を大きくすることを許していく。小刻みな運動から、大きく、それでもゆっくりと腰を回したり、グラインドするような動きに変えていった。  メルのペニス全体で、肉壁を突き押して刺激を交換する。少し腰を浮かせて、いったん理恵の肉壷から外に出し、その雁首で理恵のクリトリスをひっかくようにした。 「あ、ひ! ひゃぁん、そこ、だめって……」  メルはそんな理恵の言葉には耳を貸さず、その上下運動を繰り返してクリトリスをいたぶり続けた。すっかりかぶっていた皮からは露呈し、勃起しきって小豆粒ぐらいの大きさになっていた。 「これで、イったら、もったいないからね」  理恵が顔を掌で隠して喘ぎはじめたのを見て、その行為を中断する。もう、ただ快感をむさぼるだけの動きをしてもいい、そういう判断だった。 「メル……イくときは、中で出してね。どぴゅどぴゅいっぱい、メルの精液でいっぱいにして」 「うん。理恵ちゃんも……いっしょにね」  あとは普通の言葉を忘れたように、二人とも喘ぎ声と、性器の呼称、そしてお互いの名前だけを叫んだ。 「あああふん、いい、気持ちいい、理恵ちゃん、ちんぽ、ちんぽがいいの、いっぱいこすれていいの、まんこぐちゅぐちゅで、ちんぽいいの!」 「うふぁん! メルの、メルの、ちんちん、私の、中で、ずぶずぶ暴れて、あはっ、いいよ、いっぱい、いっぱいして、いっぱいずぶずぶして!」  びゅるちゅ! ぶっ、ぶぶっ、びゅつ、つぷっ! ずぷっ! つぷっつぷっつぷうっ! 「ああ出る! 出ちゃうの! 理恵ちゃんのおまんこの中で、あたしイっちゃうの! ちんぽからせーえきいっぱいどぷどぷ出るの!」 「好き! 好き! メル好き! メルのちんぽでイく、イく、あふっ、ああああああ、あああああっ!」  メルは達しそうになる瞬間を目の前にすると、理恵の腰をがっしりとつかんで、理恵の膣内の一番奥に自分の怒張を押し込むようにした。  理恵の重さを感じさせる白く肉感たっぷりの尻はベッドからは浮き、メルのペニスは垂直に理恵の雌器と結合していた。 「あたしも好き! 理恵ちゃん好き! ああん、ああ、イくぅ、イっちゃう! 理恵ちゃんのに出るうううぅ!!」  びゅくっ! びゅびゅっ! びくちんっ、びびゅっ! ぶっ、ぶぶっ、とぷ、ぷぷっ……。ひくっ、びくっ、ぷぷっ……。びゅっ! ぶぶ、びゅびゅ……。 「あ、ああああっ、んっ! ん! ん!! はあ、ああふ、ふぅん……、あっ、ん、っ」 「やぁ、理恵ちゃん、あたし、まだ出るっ……んっ! ああんっ!」  びゅぶっ! ぶっ、ぷっ、つぷっ、びゅっ!! ぶっ、くぷっ……。 「うん、メルの……まだ私の中で精液吐き出してる。わかるよ……」  ようやく何回かの射精を終えて、メルが理恵の膣中からやや萎えかけた肉根を抜いた。  すでに膣外へあふれかえってシーツに白濁の溜りをつくっていた部分に、さらに重なるようにしてその高さを増した。  そのまま溶け込むように二人は眠った。  一夜に何回も交わることもある二人だったが、今回は濃密だったからかシーツもお互いの愛液でまみれた性器もティッシュでぬぐうことすらせず眠りについた。  朝、先に目覚めたのは理恵のほうだった。眠気がまだ頭にモヤを作っていながらも、昨夜の痴態と痴語をおぼろげに思い出して顔が熱くなる。  脇にぴったりと寄り添って、まだ深い眠りにあるメルの金の髪を撫でる。  ベッドから降りて、まだ股間にねっとり感を残す愛液と、そのほかもろもろの二人で交換した体液をシャワーで洗い流した。ショーツだけ身につけて、ベッドに戻ってきていてもまだメルは枕を抱えて寝ていた。  あふれるほどに大量の射精を膣内にされても、これで天使の子を身ごもるようなことはない。見た目も匂いも味も、本物の精液と寸分の違いもない(確認済み)が、それは理恵の魔力を高める、むしろ栄養剤に近いものだそうである。  行為を重ねるごとにその実感はあるし、ホルモンにも影響を与えているのか生理がほとんどなくなった。メルに射精されなければ次第にもとに戻るらしいとのメルの言を理恵は信じているし、実際のところ毎月のわずらわしさから解放されるのは爽快ではあった。  テーブルの上にあるリモコンを取って、テレビをつける。冷蔵庫からフルーツ牛乳を出して、少しずつ目を覚ましながら報道番組をザッピングしていた。  昨日、理恵が出会ったような怪物はニュースには出てこない。あれは闇に生まれ、闇に消える類のものであり、理恵の活躍も闇に属するものだからだ。  休みなので起きたのは遅い。そろそろ番組がバラエティ色強くなってくる時間帯だった。そんな中、とあるニュースが彼女のリモコンを操る手を止めさせた。 「──寺の仏塔が破壊されるという事件が──」  理恵の猫を思わせる吊り目が、さながら猫のごとく瞳孔の大きさを変える。ぼんやりとテレビ画面の周囲を泳いでいた視点が定まった。  次々とアナウンサーの口から発せられる「盗難」、「各地で同様の事件」、「仏舎利」という単語が、理恵の頭にストーリーを作っていく。 「どうやら、変な遊びをしてる奴がいるってことか」  よし、とフルーツ牛乳を飲み干して、テーブルにトンと瓶を置く。  次に、頭に乗せていたバスタオルをぶんぶぶんと振り回した後に肩にかけると、まだベッドで丸まって寝ているメルを蹴り起こし、シーツを洗濯することを指示した。 第三章 似たものどうし? 素直になれない二人  メルに家事をいいつけて、理恵は家を出た。  行き先は電車に乗れば一駅の場所だったが、天気がいいので自転車で行くことにした。  こちらに出てきて最初に買った、中古のママチャリ。店員に状態は「あんまり良くないですよ」と言われて買った一番安いものだったが、気に入っている。  住宅地をいったん抜けて、川沿いに走らせる。初春の風が気持ちよかった。  時折見つけることが出来る梅や桃の花を楽しみながら進めていると、目的の場所は近かった。半時間もかからなかっただろう。  駅にほど近い、金融会社の看板が目立つ繁華街。その雑居ビルのひとつ。隣のコンビニで自転車を駐めて、カップタイプのカフェオレを二本買った。  雑居ビルの入り口は狭くて暗かった。郵便受けの下はチラシが散らかっている。古めかしいエレベータがあるが、理恵は手前の階段を使った。  登って二階、ドアのすりガラスに「探偵事務所」と手製のプレートが貼られている。そのドアをノックもせずに開けた。 「いらっしゃい」  幅広の机の向こうに腰かけていたのは、理恵と同年代の少年だった。屈託なく笑みを浮かべ、機嫌よさそうにまっすぐ理恵を迎えた。端正な顔といっていいだろう。顔にはニキビの痕ひとつなく、少し長めの髪が目にかかりそうではあるが、清潔感が表れていた。  名を、毛利《もうり》栄《さかえ》という。理恵と同じ学校、学年の生徒である。また、この「探偵事務所」の所長でもある。他にもいろいろな肩書きを持つ男ではあるが、それはまた別の機会に語られる。  その傍らに、主人を護衛するかのように長身の人物がいた。昨日に理恵とは一度会っている。襲われていた女性を引き取った、大鴉に乗った男。国松《くにまつ》定文《さだふみ》という。  栄と対照的に、定文は体も表情も微動だにさせず、直立を保っていた。 「これあげる」  コンビニ袋から、カフェオレを取り出して栄に渡した。 「お、差し入れ?」 「隣のコンビニに自転車駐めたから、駐輪代がわりに買ったのよ。別にあんたに買ってきたわけじゃないから」 「だとよ、サダ。おこぼれにあずかろうぜ」  栄はすぐにストローを突き刺して飲み始めたが、定文はいったん受け取って奥の部屋に行くとまた戻ってきて同じ体勢をとった。冷蔵庫にでもしまってきたのだろう。 「──いちおうサダから聞いている。おつかれさん。報酬はスイス銀行のほうに振り込んでおくからね」  特に報告もしないうちに、栄はそう言ってにこにことうなずいた。  理恵は片方の眉をひょいと上げる。 「世間でいう『スイス銀行』は、スイス『の』銀行ってことで別に特定の銀行のことじゃないらしいわよ」 「へえ」 「スイスでは法律で銀行員に守秘義務が課されているから、犯罪を起こしても調べられないからってこと。どっちにしても私は外国に口座持ってないから、いつものように普通に振り込んどいて」 「理恵ちゃんと話していると雑学が増えていいね。なあサダ」  栄は肩をすくめて、背後に銅像のように微動だにせず立つ男を振り返る。定文はとくにそれにコメントすることなく、無言であごを縦に動かした。  しばし沈黙が部屋に訪れたが、栄は自分のペースで話をつないだ。 「というわけで、また次に頼みたいことがあったら連絡するよ」 「待った」 「ん」 「関わったものとして、いろいろ聞く権利はあると思うんだけど。あの化け物がなんで沸いたのか、とか」 「んー、でも、いや」 「浅井君、栄が言いにくいようだから僕が言うが」 「あ、サダこのやろ」  栄が立ち上がろうとするのを、定文の大きな手が押さえ込んだ。子供をあしらう父親のようだった。 「心配しているんだよ。こっちでもいろいろ調べたんだが、どうやら事が大きそうなのでね」 「それって……これと関係ある?」  理恵はポケットからハンカチにくるんだものを取り出した。中からは理恵が昨日、仏舎利と見込みをつけたものが現れた。 「仏舎利だね。あの化け物から出てきたんだろう」  定文は一瞥しただけでそう断じた。 「そしたら、ニュースで言ってる仏舎利の盗難事件っていうのは」 「それも関連している──あんまり僕がしゃべると栄がすねるからね、ここまでにしておこう。栄の口から聞いてくれ」 「すねやしねえよ」  そうは言いつつも、栄は唇をとがらせていた。 「教えてくれなくてもいいよ、それなりの態度とるだけだし」 「教えろって言ってるようなもんじゃないか、じゃあ、あまり首を突っ込まないって条件付で」 「へえ、栄は私の行動を指図するんだ」 「そうじゃなくて……おい、サダ、お前のせいだからな」 「知らんな」 「仕方ないな──じゃあ、経緯から話そう。うちにこの話を持ち込んできたのが、とあるAV女優さん。あ、あーあーあー、違うよ、そうじゃなくて」 「何よ。とうとう頭の電池が切れた?」 「もちろん、彼女が直接うちに来たわけじゃないぜ。俺と知り合いでもない」 「何を心配して言い訳してるのかわかんないけど、わかるわよ。こんなとこ何もなしで見つけられるほうが奇跡だわ」 「ま、そゆこと。いろいろルートを中継してうちに話が来たわけ。なんでも、同じ事務所の同僚が行方不明になったんだと」 「同僚ってのは」 「そういうビデオの女優さんだね。同僚であり、いろいろと相談をしたりする友達だったらしい。ある日からメールも電話も連絡がとれなくなった。引退して実家に戻ったわけでもないらしい。どこにも連絡がなく、ぷっつりと消息が絶たれている。うちで調べてみたところ、その行方不明になった日は仕事での撮影があった日で、そしてさらに調べた結果──おそらく彼女は生きてはいない」 「え?」 「理恵ちゃんに言ってもわからないと思うけど、キリザキ映像っていうAVの制作会社がある。鬼畜もの、露出もの、ハードなジャンルで、その手の人たちには人気がある」 「続けて。そういうのもあるんでしょうね」 「うん、たいていヤラセなんだ。ああいうのはね。レイプとか痴漢とかいったって演技に過ぎない。普通に捕まるからね。でも、キリザキの撮ったものは──ああ、キリザキってのがそこの社長でありプロデューサー。で、その作品でなされることは──ほとんど、拷問だった。体を傷つけたり、吐かせたりね。形容もはばかられるような事だよ」 「でも、売れたんでしょ」 「そうだね。リアルだってことで……いくつもシリーズ化して大金を稼ぎ出している。業界では知らない者がいない。税金を誤魔化しているからその実態は表には出てこないけど」 「女優さんのほうは納得ずくでそういうものに出てるの?」 「違うらしい。証拠はつかんでないけれど、最初は普通のAVとして撮り始めるんだ。で、現場でいきなり扱いが変わるわけ。で、撮った後は脅す。だから訴えられもしてないし、事件にもならない」 「酷い話ね」 「まったくだね──で、それとは別の話として、理恵ちゃんにお願いした化け物の話が来た。ああいう輩を相手にするのは俺たちも理恵ちゃんも慣れてるからね」  栄が言うように、理恵たちは禍々しいものたちと多く戦いを交えてきた。  理恵や栄たちは「力」を持つ者たちであり、そして普通の生活をしていれば知らなかった闇を覗いてきた。 「昨日理恵ちゃんが焼き払ってくれた化け物については、出自や現れた原因が不明だったわけさ。今朝までね」 「今朝?」 「そう、依頼元から情報が入ってね。どうもそいつは仏舎利を核にして出来上がった化け物で、そこに件のキリザキがからんでいるらしい」 「つまり、化け物を生み出したのも、仏舎利をかき集めているのもその変態ってこと?」 「先に言ったように証拠はないけどね──まあ、間違いない線じゃないかな。警察や上のほうもその線では動いているけれど、キリザキは金もパイプもある男だ。なかなか尻尾はつかまれない。それが現状」 「それじゃあ」  栄は理恵に向かって手を広げ、言葉を制した。 「言いたいことは分かる。でも今回、相手は化け物じゃないから殺せばそれで済むってもんじゃない。俺たちが表舞台に立つことなく、そして色々なことがうまく収まるようにしないと」 「その間に、誰かに被害が及ぶかもしれないじゃない!」 「いや、まあ落ち着けよ」  不意に、不動を貫いていた定文が、その長身をゆらりと揺らした。 「調べたいことがあったのを思い出した──失礼」  定文は大股で出入り口のドアの方に向かうと、のっそりと手を少し上げて出て行った。  そのひょうひょうとした様子に理恵と栄はしばし、定文の出て行ったドアのほうをずっと見て固まっていた。  栄が肩をひょいとすくめ、つぶやく。 「あれで気を使ったつもりなんだぜ」 「え?」  栄は机を回り込んで、理恵のすぐそばまで寄ると、机に腰掛けた。 「サダはいい奴なんだってこと。話は戻るけど、俺はお前が好きだ。知ってるよな」 「な。何いきなり」 「好きだから、大切なんだ。俺は理恵が強いのは知ってる。たいていのことは自分で何でもできる。頭もいいから間違いも少ない」 「ほめ殺し?」 「正直な気持ち。でも、誰しも油断はあるし隙はある。いくら強い格闘家でも、気違いの振り回す包丁に傷つけられることはある──心配なんだよ」  栄は机から腰を浮かせると、長い手を伸ばして理恵の腰をつかみ寄せた。  片方の手で、そっと理恵のあごをつかんで、上を向かせる。  理恵はそれに素直に従った。かすかに唇を開けたまま、栄を待つ。寸刻の瞬きのあとに、唇が触れ合う。  つ、つ、と小鳥がついばむように、お互いの粘膜が触れ合う感触を楽しんでから、次第に強く押しつけあう。より濃厚なふれあいを求めて口は開き、そこから唾液をまとわせた舌がのぞく。 「ん、ん……」  唾液でからんだ舌が、より多くの面積を接触させようとからみあった。しばしそうやって淫らに舌を遊ばせた後、理恵はふと正気の戻ったように栄を自分の体からひきはがした。 「──こんなので、誤魔化されないから」 「そうなの?」  栄は軽く首をかしげると、素早く理恵の背中に回って、理恵が机に手を付かせる体勢にした。決して手荒にしたわけではなく、その動きはダンスを踊るように軽やかだった。 「何すんのよっ!」 「ふふーん、やっぱり。理恵ちゃんはえろえろだねえ」  栄はすばやく理恵の背中に潜り込むと、手をスカートの中に忍び込ませていた。吸い付くような太ももの手触りとともに、その指先が理恵の下着に触れた。そっと触れただけで湿り気が感じられ、その奥で蜜が満ちているのが分かる。同時に、雌の匂いが発散した。 「何言って……焼くわよ」 「魔法で? できないくせに」  栄は力をこめて、もう片方の手で胸を刺激するように強く抱きしめた。同時に、優しく理恵の秘部を指でノックする。スポンジが許容量以上の水を吸い込んだように、じゅん、とヌメりけのある水分が染み出してくる。 「ん……くうん」 「キスする前からこうだったんでしょ。わかるんだから。長い付き合い。──もしかして、お家出るときからもう?」 「違うったら……離してよ」 「じゃあここは離す」 「あふっっ!」  栄が指で突いたのは、蜜をにじませている箇所から少し後ろに位置するすぼみだった。 「ここ大好きだもんね。お尻大好きの変態理恵ちゃん」 「そんなんじゃ、ない」 「ほら、ここやわらかいよ。指の頭が入っていく」 「べつに好きなんじゃなくて……弱いだけ、ん、やぁ、やめなさいよ、ん、んっ」  栄の指が、下着越しに理恵の肛門をとらえ、ぐい、ぐいと食い込んでいく。理恵は唇を震わせ、性器ではない場所からの性感に耐えていた。  だが、それも長くは持たない。口からは拒否の言葉よりも、熱い吐息が出るようになった。 「ほらやっぱり。自分からすりつけてきてるんじゃない?」 「……違う」 「まあいいや。強情な子には、ちゃんと証拠を見せてあげないとね」 「え? やだ!」  栄はすばやくショーツに手をかけると、するっと引きおろす。理恵が机に手をついていたので、子供を着替えさせるようにたやすかった。  そのとき、理恵の股間から足首にかかったショーツの裏側まで、つうっとひとすじの線が通った。粘度のある愛液が糸をひいたものだった。 「ほらほら」 「なに、何見てるのよ……」  理恵からは栄が何を見たかはわからない。理恵は下着の内側を見られているのだと思った。自分でも、そこがどれくらい濡れて、はしたない染みを大きくしているかは想像できる。 「水もしたたる、ってやつかな」  栄は理恵の尻肉をつかむと、その谷間に顔をうずめた。間をおかず、尻の後ろから伸ばされた舌が秘処をとらえる。 「あ! あふっ、あん、んんっ……あん」  ちぅ、ちゅぶっ、ぴちゅ、ちぷっ。  栄はわざと音が鳴るように舌を動かした。理恵の陰唇と、栄の舌が淫液を挟み込んで水音をたてる。 「ん! くふぅ……ん、誰か……来ちゃうよう」 「そうだね」 「定文さんだって、帰ってくる」 「帰ってくるかもね」 「ひゃ! うう、あっ、あっ。あぁぁぁ、いや、そこ、そこだめ」  さらに栄は理恵の股の奥へと首を伸ばす。おのずと舌のリーチも、理恵の陰部の前面にまで到達した。その先端が、すでに陰唇の被いから顔を出したクリトリスへと触れた。 「かまって欲しそうに勃ってるから、可愛がってあげないとね」 「あん、ん、ああっ、やだ、もう……これだけで」 「イきそう? 誰か来そうなのに?」 「え? ん、あん、ひぅん……、う、嘘でしょ?」 「足音したかも」 「やだ、あぁ、いやぁ、激しくしないで……、ん、あ、きちゃう、あ、んあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」  陰部から体全体に走った、堪えていた快感の決壊。それが理恵の肉づきのいい肢体をぶるぶると震わせ、水分で満ちていた彼女の股間から雌の匂いを発する雫をぼとぼと散らした。  机に手を支えにしていた体勢から、がっくりと力が抜けて上体を机に預けた。さっきまで気にしていた、誰かに見られるという羞恥もどこへか、完全に放心して淫欲の痺れに麻痺していた。 「まだ、満足してないよね? やめてもいいけど」 「誰か、来る、よぅ……」  乱れた息で、理恵はそう言うのがやっとだった。 「誰か来なければいいの? なら安心。さっきサダ、ご丁寧に鍵かけてったぜ」 「え……」 「だから、問題ないよね」  優しい声でそう尋ねた栄。その目を見ずに、こくり、と理恵はうなずいた。 「……この格好のまま?」  理恵はさきほど達して、上体を机に伏せたままだった。汗でつや光っている尻が高く突き上がっている。スカートはまだはいているが、すっかりまくり上げられてしまっている。その腰に栄は手を添えた。 「かわいいお尻が見られるからね。ほら、ここも恥ずかしがってる」  ひくひくとかすかに動く菊門に栄の指が触れる。食虫植物のようにキュうっと締まり、しわを深くした。 「ん……いじわる、しないでよ」 「あいよ」  栄は素早くズボンを下ろす。すでに彼の陰茎は固く猛って、理恵の中に入る準備は万端だ。  理恵は栄と体を交えるのは初めてではない。といって彼女が軽い女であるというわけではなく、そういう関係になったのは栄を除けば(男性では)ただ一人だった。そして、理恵が初めて体を許したその男性とは、彼女の「家族」でもあった。  栄と理恵は、普通の恋人同士とは違っていた。体も許し、心も許しあっている。そしてお互いを認め、尊敬している。だからといって、二人でいっしょにどこかに行ったり、特に意味もなく二人きりの時間を過ごしたりはしなかった。  そういうことをしなくても、お互いの存在はいつも近くに感じていたからだった。  理恵の体は、栄の肉棒の感触を覚えている。彼のものが膨張したときにどれぐらいに大きくなって、膣壁をどれぐらいの強さで擦りつけてくるか、どれくらい奥まで突かれるのか、どれだけの熱を持っているかを知っている。  その甘美な記憶が、まだ接触していないにも関わらず理恵の肉体を蕩かせた。  ちゅ、と理恵の陰部からかすかな音。期待に蠕動した理恵の膣口がたてた音だった。 「や……」  どれだけ理性をまだ保っているように見せても、体は栄の肉茎を欲している。かつて与えてくれた快感がいますぐにやってくることを知って疼いていた。 「いくよ」  粘汁をまとった肉襞が、熱いものに触れた。 「くぅ、ん……」  それだけで声が漏れる。もう来る。やっと来る。もうすぐ熱いものが私の肉を押しのけて侵入してくる。 「んんっ」 「はああぁぁぁあうあわぁっ!!!」  理恵の膣内は中まで、熟しきった果実のようにねっとりとした汁を含んでいた。そこは煮え立つような熱さをもっていて、発達した膣のヒダが栄の陰茎を包み込むようにまとわりついた。  待ち望んでいた肉棒に恥肉を押し広げられ、一気に奥まで貫かれた理恵は、口からよだれがこぼれ落ちるのもかまわず、ただ、はう、はうと声にならない音を発していた。 「すごいな、やっぱり……理恵ちゃんのは。いまも、吸い込まれてるみたいだ」  栄は奥まで挿入したまま、理恵の耳に口を寄せてそうささやいた。 「はぅん、栄、栄ぇ……」 「ん?」 「チュウ、チュウして……つながったまんまで」  栄は子供のようにせがむ理恵に微笑んで、少し無理な体勢ながら唇を重ねる。 「かわいいな」 「好き、なんだよ。他の女の子みたいにできないけど」 「知ってる」 「はぁあ、あん、ん」  顔を離して、栄はおもむろに理恵の性器に新たに刺激を与える。膣口までゆっくりと引き抜き、また自らをもじらすように恥肉を押し広げて侵入する。  抜くときは先まで全部出してしまう。また挿入するときの「つぷ」という水音と、理恵が喘ぐ声の響きを楽しんだ。  つぷ、ぐぶちゅ、つぷっ、ぐぶぷっ、つぷぅぅーっ、じゅっぷっ。 「いい、音してる」  栄は内心、これだけ水分が出ると喉が乾かないのだろうか、と思う。涸れない泉のごとく、中からつぎつぎと愛液は二人の性結合を助けるべくあふれ出ていた。 「んふ、ん、ん、気持ちい、いいの……栄のちんぽ好き、好きぃ。もっとぐちょぐちょして。私のなか、気持ちいいのでいっぱいにして、ん、んふぅ」  快感を与えれば与えるほど、理恵は自らを辱めるように淫らな言葉を好んで発する。栄はそれを引き出そうと、さらに武器となる陰茎の動きを変えていく。栄の腰が打ちすえる、透明感さえ感じさせる理恵の白い尻はみずみずしい。ぱつん、ぱつん、と弾けるように音をたて、その陰では恥毛がすべて愛液でじっとりとなって、赤黒い栄の剛直のたけるくるった動きを受け止めて、ぶっちゅ、びちゅ、ぷっ、ぐっちゅと湿った音をたてた。  やわらかで熱をもった幾重もの膣内の肉襞が、栄の固く張った雁首によってえぐられる。理恵も意識してはないだろうが、寸断なく膣壁で栄の性器全体を締めあげた。それがまた、雁首のかかりを強くして、二人の淫感を高めていった。 「理恵の、すご……アソコ全体で、俺のつかまえてる」 「あっ、栄のも、すごく、私のごりごりしてる、ひぁう! ふぅ、ん、ちんぽで、私のまんこ、いじめられてるの、あん、ん、ああぅん! あん、あん! あん! あん! あぅぅ……速いよ、うん、いんいぃん、いん! 傘みたいなので、私の中、こそげあげられてる、あああぅふん! ああああめぇぇ、変に、変になるの! ああああっ!」  達する瞬間をもとめて、栄はさらに理恵の腰をつかまえた手に力をこめた。理恵も机のヘリをぎっちりと握って、どこかに連れて行かれそうな自分の身体を押しとどめていた。 「ん、理恵……最後は、こっちで」  栄が指を軽く突いて、そう示したのは理恵の菊門だった。激しい行為で、自ら濡れることのないその穴は、二人が発した愛液で濡れそぼって、新たな快感の扉を開ける役目をじっと待っていた。栄が指に力を入れることなく、理恵のアナルは第一関節のところまで軽く迎え入れた。 「お、お尻? お尻好き! ん、いい、ああぁ、好き、お尻にされるの好き! イこう、お尻でいっしょにイきたいの! あん、あんんぅんぅ、くはぅん、んぅんぅ、あぁっぁぁああああ! お尻! お尻の穴!」  自分で発した「お尻」という言葉でスイッチが入ったように、理恵は自分から腰を激しく振った。彼女にとっては、行為中のその言葉は、性器よりももっと卑猥な言葉だった。 「うん、理恵、お尻でイくよ、っ、ん!」  栄が理恵から肉棒を抜くと、ぷしゅぅ、という音とともに膣内から淫液が噴き出した。それが床につく前に、素早く赤黒いミサイルの先端を理恵の肛門へと差し入れた。 「はぁぁぁぁぁぁああああぁぁぅぅぅぅぅんんんん!!!!!!」  きつく収縮した肛門を広げ、亀頭は抵抗を受けながらも、その雁首まではめ込み細工のようにすっぽりと中に入った。 「う、理恵のお尻、お尻の中でイくよ!」 「うん、ああああっ、ぁ、お尻でイって、イって! どっぴゅ、どぴゅって、栄の熱いの、お尻に浣腸して!!」  紐で締めあげられているかのように、さらに栄の雁首はぐいぐいと締めつけられた。ほとんど動くことは出来ず、腰を引く動作によって、栄のペニスは亀頭の傘の部分で肛門の裏側からこじ開けようとした。 「あ、あぅん! あふ、栄の、ちんぽで、肛門開いちゃう、お尻壊れて肛門とれちゃう! ぐぅ、いや、いん、イく、イくイくイくイくイくおしりイく、いくぅぅぅぅぅぅん!!!!」  数瞬の差だが、先に達したのは万力のような締めつけに屈した栄だった。いまかいまかと射精のときを待ちわびていた精液は、どっと堰をきるようにして理恵の腸壁を洗うような量で注ぎ込まれた。  その熱さを引き金として、理恵は身体全身をびくりっ! びくりっ! と痙攣させ、肛門は挿入された異物であるところの栄の淫棒を放出した。まだ射精を続けている栄のペニスは、理恵の尻をキャンバスとして白濁液を散らした。 「……シャワーがあって助かったわ」  数十分後、理恵は窓の外を見ながら髪をバスタオルで乾かしていた。さっきの自分の痴態を思い浮かべると、栄の顔を見ることが出来なかった。 「冷たいお茶置いといたから」  栄もそれを承知している。自分は理恵に構わず、応接セットに足を投げ出して古雑誌を読み始めた。 「ん。あれれ」  理恵は窓の外にやってきた小動物を認めて声をあげた。尾が大きな一匹のリスだった。器用に手でトントンと窓をたたく。慎重に窓を開け、そのリスを招じ入れた。 「サダかな」  リスのくるりとした尾で、丸められた紙がつかまれていた。栄は広げてそれを見ると、理恵に渡した。 「──当たりらしい」  そこには、 『浅井君へ 仏舎利は本物。また、キリザキブランドの作品の出演者で、失踪している者、数名を確認。 国松』とあった。 「無茶、すんな」 「止めないの?」 「やりたいんだろ? でも危ないときは一人でなんとかしようって思わなくていいからな」 「ありがと。頼りにしてるよ」  理恵はお茶を飲み干すと、栄の肩をポン、と叩いた。 第四章 潜入! AV撮影現場  理恵は家に帰って、ノートパソコンを開いた。  ノートではあるが、そこからプリンタなどの周辺機器がコネクタを埋め尽くすように繋がっているので、ノートとしての機動性は皆無である。モニタ一体型のパソコンと本質的には変わらない。  キツネのアイコンから、ブラウザを起動する。検索バーから「キリザキ映像」と入力し、検索結果を片っ端から開き、巨大掲示板サイトでもそれ系の板を開いてみる。  しかし、それらをすべて見ることなく、最初に開いたサイトでことは足りた。  キリザキ映像のオフィシャルサイト。全体的に黒を基調としたページの、新作紹介の隅に眼を引くバナーがあった。  女優募集  未経験者歓迎・日払可・交通費支給・アリバイ対策あり・送迎あり  アリバイ対策ってなんだろう、と考えるが、一人暮らしな(正確には同居人はいないでもないが)自分には関係あるまい、と理恵は思う。  資格の欄には「十八歳以上(高校生不可)※身分証明書要」とあった。そりゃそうだ、とひとりごちる。身分証ぐらいはなんとでもなる。パソコンがあればそれらしきものは作れるし、向こうも本気で裏をとりはしない。  バナーのリンク先にはもう少しだけ詳しい情報と連絡先が載っていた。そこに書かれたアドレスに対してメールを書く。小気味よくタタタとキーを叩くと三分もかからないうちに文面は書き終えた。  が、少し首をひねってところどころ漢字の部分をひらがなにしてみたり、顔文字を混ぜてみたりする。理恵自身、別にAV女優になろうという人間に偏見があるわけでもないが、整った文章よりはよかろうと考えてだった。 「よろしく」をカタカナにしてみたり、「!」を文中に混ぜ込んだり、漢字をかなに直してみた。  読み返して、ふん、と鼻を鳴らしてから送信ボタンをクリックする。とりあえずこれで反応待ちだ。  翌日、朝にメールをチェックすると返事が返ってきていた。送信時間は午前一時過ぎ。  意図的に崩した文章で送ったが、ビジネス文書と言わないまでも常識的なレベルの文章で面接の案内が書かれていて理恵は小さく感動を覚えた。やはりこの業界にいくらか自分が偏見を持っていることを認識する。  今日でも面接はしてくれるというので「遅れないでいきま→す」と短くリプライ。  下手すればそのまま撮影ということもありえるかと、シャワーを浴びて下着を新しいものにする。もちろん撮られる気は坊主の毛ほどもないわけだが、ある程度は肌をさらすことは覚悟している。  普段はノーメイクに近いが、眉や頬に少し手を入れる。衣服も大人しめではあるが年齢を少し高く見させられるものにした。  設定としては一浪した女子大生、地方から出てきたのであまり友達はおらず、軽い気持ちで応募してきたが大人としゃべること自体にあまり慣れていなくて、いまになって緊張と少し後悔をしている、というところだ。  面接場所はとある駅前のカフェだった。といえどもよくあるセルフのコーヒーチェーンである。携帯を鳴らすと、髪の長い男がこちらを見て手を上げた。  肌は褐色に焼け、派手なシャツの胸をはだけ、そこからはシルバーのネックレスが覗いている。サーファーのようなスタイルだったが、実際に波に乗っているかはどうか危ぶまれる年齢に見えた。 「エリちゃんね、よろしく。塚田です」  変に凝りすぎると呼ばれても気づかないので、上下逆にしただけの偽名だった。塚田はメールをくれた人物でもあった。 「……はい、どうも」  向かいの席にかけるように誘うと、塚田はカウンターに行ってなにやら注文していた。おそらく理恵におごってくれるのだろうが、希望ぐらい聞いてくれてもいいのに、と思った。ケチではないのだろうが、自分の思うように物事を進めたがるタイプではあるのだろう。  塚田がトレイに乗せてきたのはオレンジジュースだった。女性は缶コーヒーを飲まないと信じている手合いらしい。  学生証と、履歴書を差し出す。学生証は適当に公式サイトのロゴ画像を拾ってきてでっち上げたものだった。学生番号も書いているので照会されれば簡単に偽造とはわかるが、塚田はそれにはちらと目をやっただけだった。幸いとカバンにしまいこむ。  履歴書もたいして読んではいない。目を落としてはいるが、読んでいるふりをしているだけだろう。質問も特に無い。  最初に理恵を近くで見て、ふうん、といった時点でおそらく合否は決まっている。服の上からおそらくスリーサイズは目測されたことだろう。  そのあと勿体をつけて形式ばかりの質問がいくつかあった後、「じゃあ、エリちゃんさえよければ、さっそく移動しようか」となった。移動先は撮影場所だろう。さすがに少し緊張する。  ギャラのこととか、どんなものを撮るのか何も説明ないのね、と理恵は思いつつも、素直に従い店を出ることにした。さっさと片がつくに越したことはない。  移動先はホテルかと思っていたが、小奇麗なスタジオだった。普通の撮影会などにも使えそうな明るい雰囲気だった。中にはスタッフだろう、三名の男性と一名の女性がいた。 「女のコ連れてきたよ、すぐ撮影入れる?」  塚田はきびきびと指示を出していく。理恵は部屋の隅におかれたソファに座って待っているように言われた。 「メイクは要らないですか?」 「あー、いんない。女子校生もんだし手入れなくていいよ。それより衣装出してきてくれる」  メイク・兼衣装係なのだろう、女性は隣室へと入っていった。  ほどなく、女性が衣装を手にして戻ってくる。ナイロンの袋に入った新品のようだったが、それは体操服一組だった。 「まずこれ」  女子校生という単語が聞こえた時点で予想はついたが、実際にこうブルマを渡されるとAV撮影だなあという実感がわく。 「U―718っていってね。マニアの中では逸品とされてるんだ」  そんな情報は別にいらない。 「じゃあ、着替えてきます。更衣室は……」 「向こう。あ、でも説明いるな。カナ、ついてって」  呼ばれたのはさっきの女性だった。言葉少なに理恵を誘う。  更衣室には、無造作に段ボールが置いてあり、その前で着替えるように言われた。 「カメラ回ってるから、こっち向いて着替えてね。何も知らないで盗撮されてることになってるから」  いきなり作りの映像ですか、と理恵はある意味感嘆する。アダルトビデオはファンタジーで出来ているんだなあと思う。 「……そうなんですか」 「うん。じゃよろしく」  確かに耳を澄ませば、ジーとかすかな音がする。撮られているとわかって脱ぐのは恥ずかしく、また馬鹿らしくもあったが、言われたとおりにカメラのほうを向いて脱ぎ始める。いい加減にしていたとき、どこかでモニタ監視してると具合が悪い。  どうやってここを脱出するかは理恵もおおざっぱな思考の持ち主なのでノーアイデアだったが、少なくともここのカメラは壊すなりなんなりせんとな、と心には留めておく。  スカートを脱いだところで下着姿になる。白のセットで、少しだけレースをあしらったものだ。デザインは大人しめだが、ショーツは股上が浅く、肌の露出は多い。  自然に、かつ手早く着替えを手にする。少しざらついた化繊の手触り。中学の頃ぶりのブルマだった。特に見たところ何のヘンテツもない濃紺のブルマである。サイドにラインもなく、シンプルなものだった。  いざ穿いてみると、塚田の言っていたことが理解できた。  まず、股間からの角度がかなり鋭角で、最近は使わなくなった言葉で表現するなら、かなりのハイレグで競泳水着のようだった。股の部分の布幅も狭く、ややもすると下着が見えてしまいそうだった。  さらに、理恵のヒップが大きめなのもあるが、サイズ的には問題がないはずなのに尻に強く食い込んでいる。そのせいで尻肉がブルマからはみ出てしまう。指でその部分を引っ張ってみても、少し動いただけでその状態に戻ってしまう。  ほとんど、色のついたショーツを上から重ね着しているのと変わらない。さらに食い込み感があるので、尻の形は露わだし、恥丘のふくらみまで裸よりも強調されてしまう。  撮られている状態で確認するわけにもいかなかったが、きっと股間も真空パックをされたかのようにその形を浮き上がらせているのだろう。  理恵はこれからこの姿を人に晒すのだと思うと内心欝々ではあったが、仕方がない、仕方がないと心中唱え続け、上の体操服も着てから部屋へと戻ることにした。  廊下を歩いていると、人の声が聞こえた。女の艶かしい声。ほかのどこかでの撮影か、音声チェックかそういうものかもしれない。気にはなったが、あまりうろつくわけにもいかない。方向の見当だけつけて部屋に戻った。 「おー、いいねいいね。現役でもいけるよ」  塚田はそういうが、年を誤魔化しているのだから当然だ。スタッフたちが理恵の股間に遠慮のない視線を投げつけるのが分かる。 「あの……ここで撮るんですよね」 「ん、そう」 「このビルは専用のスタジオなんですか? 他にも撮影してたりとか」  ちゃんと文句も言わずに着替えてきたからか、かすかに見えた警戒が薄くなっている気がする。少しでも情報を手に入れようと、尋ねてみる。 「ロケとか必要なときは別だけどね。たいがいはここで撮っちゃう。教室、オフィス、ホテル、そのあたりは使い回しがきくし、どこか借りるより効率的なのよ。今日もどっかで撮りやってるんじゃないかな」 「そっちはキリザキさんが撮ってるんですか」 「いや、最近あの人は滅多に現場に出てこないねえ。デスクワークのほうが忙しいのかな? 顔も最近見てないよ」  キリザキはここにはいないらしい。直接本人と接触できれば、とも思ったが、そうはいかないようだった。 「──さて、始めよう。エリちゃん、ラジオ体操できるよね?」 「え? はい」 「あいにく音楽ないんだけど、やってもらえるかな。カメラは動きながら撮るけど、あまり意識しないで。音声はとらないから、僕の指示に従って」  撮影は始まった。  正直ラジオ体操はしばらくやっていなかったが、おぼろげな記憶で体を動かす。確かはじめは背伸びの運動で── 「カメラあんまり見ないで、笑顔でね。うそ臭くてもいいから」  普通に微笑を浮かべていても、塚田のOKが出ないので、馬鹿になったつもりで笑顔をつくってみる。こんな顔で街歩いてたら怖いわ、と思いながら体操を続ける。その間もカメラは忙しく理恵の姿態をおさめていく。  屈伸のときは後ろに回って尻肉が揺れるのをつぶさに撮っていた。重力にさからってムチムチと張り出たカーブが、理恵の上下運動によって、ぷる、ぷる、と無邪気に揺れる。  上体を反らしたときには股間に触れそうになるまでレンズが近づき、ブルマに締めつけられて浮かび上がらせた性器の形をとらえる。大陰唇のふくらみや、割れ目がくっきりとわかる。  運動をしていることで、ブルマの食い込みはさらに激しくなる。その間に直したりする動作が許されなかったので、どんどんずり上がって下着と変わらないほどの角度になっている。また、理恵自身はまだ気がついていないが、股間の部分からショーツが少しはみだしてきている。  体操がひととり終わるとフラフープを渡され、それを回すように塚田に指示を受ける。フラフープも久しぶりだったが、これも腰を動かさないと回すことができない。塚田からは長く回し続けてと声をかけられるが、すなわち腰を激しく動かせということだ。  その後はマットの上での器械体操。開脚前転、ブリッジと、やはり股間をさらすようなものばかりだった。  股間を隠す部分の布幅はさらなる食いこみのせいでどんどんと細くなり、それに伴って理恵の秘部を刺激した。  また、それを幾人もの他人の目にさらしている羞恥もあいまって、理恵の秘部は湿り気をおびてきた。汗もあるが、その奥からは違う芳香をもった液が染みているのが分かる。ショーツに染みができているかもしれないと思い、理恵は顔が熱くなるのを感じた。 「オーケー、いい感じ。どんどんいこうか」  シーツをひいただけの簡単なシングルベッドが持ち込まれ、大きなクッションを背に引いて座るように言われた。さらに足は体育座りの形から少し広げる。ここで理恵はやっとショーツがブルマからはみ出ているのを気づき、指を使って直す。そのとき、やはり自分の股間が熱と湿気を持っていることを確認した。 「ひとりエッチ、してみてくれる? ふだん自分がしてる感じでいいから」 「え?」  いままでの体操の指示のようにさらっとそう塚田は口にした。そうか、AVなんだ、と理恵はいまさらながら思う。 「したことない、なんてのは無しで」 「でも……」  さんざ恥ずかしい格好をさせられたので、演技とわりきれば自慰をしているところを撮られるのは、百歩譲ってよしとできる。ただし、塚田が言ったように「ふだん自分がしてる感じ」を見せるのには大きな抵抗がある。  自分の性器をいじって慰める行為を、どんな妄想をして、どんな格好で、どんな声をあげてするのか、と問われているのと同じだ。  実際の話、理恵のオナニーは激しい。ときおり、波のように性欲がおそってきて、学校から帰ってすぐに制服のスカートの中へ手を伸ばすこともあった。そんなときは、声を殺すことも疎かになり、自らの興奮を高めるために淫語をわざと口にするのだった。  ときには道具も使うが、ショーツを紐のようになるまで引っ張って、陰唇とクリトリスを同時に刺激するのが理恵のお気に入りだった。達する頃にはショーツは淫水にまみれて濡れぶきんのようになってしまい、使い物にならなかった。 「オーケー、わかるわかる。誰だってそうよ。みんな自分のやり方は言いたくないもんね」  口をすぼめてオウケエイと言うのは塚田の癖らしい。  塚田はひとつの提案をした。これからは理恵の声も録るから、塚田からあれやこれやと指示はできない。だからテレビ番組でカンペを出すように、理恵に書いたものを見せる。それに応じて理恵はアクションを起こしていけばいいということだった。  それを聞いて理恵は気が楽になった。「自分が性欲のためにやっていること」から「させられていること」に変わったことで、いやらしい声を出したにしてもそれを演技と割切ることが自分でも出来たからだ。  この方法は、塚田のよく使う手だった。どうしても羞恥のぬぐえない経験の浅い相手には、この方法でいい画が撮れる。  羞恥はなくてもいけないが、淫らにさせるブレーキでもある。映像である以上、ある程度の演出を女優にはしてもらわないといけないからだ。 「ひととおり胸を愛撫して、それから次第にアソコへといって。ちょっとねちっこいぐらいでいいよ。こっちで編集するから」  それを最後の前置きとしてカメラが回された。  まず、ゆっくりと片手で胸を持ち上げた。その大きさを確認するように、下から手をそえた。かすかに布地が乳房全体を撫でるのが心地いい。だが、まだ淫靡な感情をわきたたせるには足らない。 『こねまわすように。声も出して』  スケッチブックにそう書かれているので指示に従う。  やわらかい餅をこねるように、その形を乱す。 「あん、ん……胸……気持ちい……」  実際のところは胸をこねくりまわしてもそんなに気持ちのいいものでもないのだが、ここは演出と割り切っている。殿方は乳がぷるぷるするのがお好みなのだろう。  それから乳首をつまんでみたりプルプルふるわせてアンアン言ってみたものの、あまり乗り気でないのが見てとれたのか、 『胸はもういい』  とのことであった。  胸は個人的にも感じるほどでもないが、下のほうについては、さっき体を動かしていて股間にブルマが食い込むだけでじんじんするような刺激を感じていた。  その部分に指が触れると、演技でなくほんとうに声を発してしまいそうだった。  這うようにして、手を下に伸ばす。それがブルマの粗い布地に触れ、なだらかな盛り上がりを見せているところまで到達する。 「んんっ」  やはりそれだけで、理恵の性器は新たな刺激を期待した。内部から、分泌液がしみでているのがわかる。色が濃いブルマだったが、もう外まで染み出ているのではないかと想像すると、急に理恵は羞恥に襲われた。  ──私、人の前でこんなかっこうして、濡らしたブルマ見せてる……。  今さらといえばそうだったが、胸のいいかげんな愛撫で去りかけていた羞恥が引き波となって戻ってきた。いま見られているこの姿は、理恵がひめやかに自らを慰めている姿につながっている。  淫欲を満たすためだけの行為。人には聞かせられない声、恥部を弄ぶための不自然な体勢、牝の部分から発せられる匂い。  いま自分がやっていることは真似事にすぎない。それでも、本気でするオナニーがまざまざと覗かれているようだった。 「ん、ふぅん……んっん」  漏れる声は、次第に熱い。  ブルマにできた溝を、人差し指と中指をそろえてなぞる。その形を浮き立たせ、中から汁音と匂いが漏れる。カメラを構えているところまで、届いているだろうか。 『いろいろ、言葉にして言ってみて』  そう出されているのをしばらく気づかなかった。 「あ、あん、はずかし……、でも気持ちいいの……」  いくら指でブルマの上から恥部をこすりあげても、理恵にはもどかしさが募るばかりだった。  いつもしているように、ブルマを強く引っ張って自分のあそこに食い込ませたかった。紐のようになったブルマを前後させて、下着の上から激しく擦りつけたかった。  ぎりぎりの理性で、みずからそうするのは耐えた。そして指示を待った。『激しく』とだけ出されても、それを拡大解釈して理恵は体が求める自慰スタイルにしたに違いなかった。  理恵の願いがどこかの誰かに通じたのか、新たなメッセージがスケッチブックに書かれた。 『ぐいぐい食いこませて』  理恵に尻尾があったら、犬のように千切れんばかりと振っていただろう。欲望をむきだしに秘所を慰めることに、口実ができた瞬間だった。  私はいやらしい女じゃない。私は好きで他人の前でオナニーをしてるわけじゃない。私は人に見られてブルマを濡らしているんじゃない。頭の中で、無数の言い訳が浮かんでは消える。  だって、そうしろって言われてるんだから。演技しないといけないんだから。  演技だから、ちゃんと声も出さないと。本物っぽく喘がないと。わざらしく淫らな格好をしないと。 「ん! 気持ちぃ、いいよ、んんっ! これ好き、すきぃ……」  ブルマの股の部分を下着ごと左右からつかんで、ぐいと力強く引き上げた。じゅっ、という音が聞こえた。その音は確実にマイクまで届いていた。 「ぁん! んぐん、ん、いん……ふんうぅん! ん! んっ! すごいのっ! クリこすれるっ、おまんこぐりぐりなのっ!」  紐状になったブルマの横からは、理恵の恥毛がはみでている。ときおり、力いっぱい引き上げられたときは、陰唇までがその複雑な形状をのぞかせていた。  木綿のショーツは生地の限界まで水分を吸い込み、引っ張られると、じゅ、じゅ、と雑巾が絞られるように過剰な雫を垂らした。 『イったふりして終わって』  そう書かれたのも理恵の目にはもう入っていなかったが、極限に向かって彼女の意識は脳内でフラッシュがまたたくような感覚に翻弄されていた。 「ん、んーっ! んーんっ! いいのぅ、おかしいの、これ私じゃないの、違うの……、いいんっー、んーっ……あっ、あ、きちゃうよ、ブルマはいたままでいくの、いくのっ」  理恵は背中を反らせて、肩と頭を床につけた。逆にひざを立てて腰をあげ、手を使わないブリッジのような体勢になった。もちろん、手は両方とも理恵の淫器を責めるために、ブルマとショーツを力強く握っている。 「あっ、あっ、いいよ、いいよ、これいいの、すっごくいいのぉ、ブルマ食い込むの好きっ! んふーっ! んん!」  理恵のクリトリスは、つんと突き立って包皮からむきだしになっていた。腰を突き出すことによって、さらに生え始めの筍のようなそれが淫汁を吸ったショーツに強く擦れる。理恵はクリトリスが激しく前へ後ろへなぶられるさまを頭で思い浮かべることができた。  そして、ブルマとショーツを握った手を力いっぱい手元に綱引きのように引き寄せた。  クリトリスが潰れるように形を変え、陰唇と肛門をも同時に擦りあげた。 「うぁぁぁぁぁぁあああっ! いいぃ! いぃぃぃくぅぅぅぅぅぅうう!!!!」  びくっびくびくびくびっくっ、と腰を激しく小刻みに震えさせると、力絶えるようにして理恵は崩れこんだ。 「いや、よかったよエリちゃん、ちょっと休憩入れようか」  そんな塚田の言葉もあまり耳に入らなかったが、さきほど更衣室にも案内してくれたカナという女性が同じフロアの奥へと理恵を連れて行った。  休憩室と言っていたが、簡単な椅子と自動販売機、そして空きのペンキ缶を利用した灰皿が3つあり、むしろ喫煙室として使われていそうな部屋だった。広さは十畳ほどだろうか。広い割にはものの間隔が広がっており、自動販売機にお金だけ入れてカナが去っていくと、理恵だけになってぽつんとしてしまった。  さっきのオナニーで本イキしてしまったために、まだ足がガクガクしていたが、確かに冷たいものを口にはしたかった。アイスティーを買って、一気に缶の半分ほどを飲み干した。  貸してもらったガウンを羽織ってはいるが、服装はさっきのままだった。そのままシーンはつなぐということで、つまりは股間が湿っていて少し気持ちが悪い。  濃紺だから目立ちはなしないが、じっと見ているとそこだけ色が濃くなっているように思えて、理恵はガウンの前を合わせて隠した。  何か考えようとすると先刻の自分の痴態を思い出してしまうので、アイスティーの缶に書かれた字を眺めていた。ほんとうにAV女優になりたいならさっきの撮影は成功だったかもしれないが、理恵はそんなことのために乗り込んできたわけじゃなかった。  そうしてぼうっとしていると、廊下から一人の足音が聞こえて、休憩室に入ってくると少し理恵に会釈をして理恵から近いところに座った。やはり彼女もガウン姿で、ぴったりと前を閉じているところを見ると、下は下着だけか何もつけていないのだろう。  別に親近感を表したわけではなく、椅子が少なかったから自ずとそうなっただけだった。  飲み物は飲まず、彼女はガウンのポケットから煙草を取り出して吸い始めた。少しふかすだけで、ほとんどは立ち上る煙を眺めていた。  理恵にとってはチャンスだった。この内部調査で質問をしても怪しまれない相手だし、スタッフたちより話しやすそうだった。  椅子を移って、より近い位置へと移動する。 「おつかれさまです」  第一声は少し悩んだが、このあたりが無難だろう。 「……あ、おつかれさま」  落ち着いた声だった。年は二十より三十のほうが近いかと理恵には思えた。髪は明るい色に染めているがどことなく艶がなく、若者風ではあるが雰囲気や肌などでところどころ年齢を感じさせた。  そこからどう話を持っていこうかと思ったが、意外にも彼女のほうから話を始めてくれた。 「──初めて?」 「え、ええ。はい」 「やっとね、単体での作品なの」  単体という言葉に首を傾げると、女優が複数で出演するのではなく、一人で一本の作品に出演するのを単体物というのだと説明した。 「──高坂みはる十八歳、キャピルン制服白書」 「デビュー作ですか」  語感からして時代を感じる。 「そ、まだ若かったのよ。四年前の話。それでも二十歳越えてたけど。一人で出たのはそれっきり。あとは企画物よ。素人ナンパとか、乱交とか、露出痴女。ギャラも下がり行くまま」 「だいぶ違うんですか?」 「私の頃はそのデビュー作で五十万、企画物でだいたい数万ってとこ。それじゃ食べていけないから、ヌード撮影会とかいろいろやってる」 「大変……そうですね」 「そ。だからあなたも早いうちにやめちゃいなさい。あんまり割に合うもんでもないから」  打ち明け話をすることで気が楽になるのか、みはる(芸名だろう)は、理恵が相槌をうつだけでいろいろ話をしてくれた。女優になるまでにアルバイトや会社勤めをしたことがないこと。高校中退で、資格もないこと。母親の手術代を払うために借金をして、それがまだ残っていること。風俗嬢になるふんぎりはつかなかったこと。 「キリザキさんには、会ったことあるんですか?」  彼女の身の上も興味のあるものだったが、本当に知りたいことを探る。 「ああ、そのデビューの頃に、一緒に飲みにいったことがあったな。いまでこそ凄い人だけど、そのころは少し変わった人っていう印象だった」 「変わった……っていうと」 「なんか雰囲気全体がよ。なんかAV撮ってる人っていうより、芸術家とか……そういや変なこと言ってたな。移植……っていうの? 人間の身体を少しずつ別のものに変えていけば、いずれ別のものに変身できるとか、なんとか。あ、『俺の身体には、仏様が入ってるんだ』とか言ってたけど、何のことかはさっぱり」  身体に、仏様……?  その言葉を咀嚼する間もなく、廊下に小走りの足音がし、若い男がドアから顔を出した。 「みはるさん、そろそろお願いします」 「はい。エリちゃん、お先に」 「あ、はい……がんばってください」 「そっちもね」  仏舎利を、釈迦の体の一部として、自分の身体に取り入れたということか? 変人の妄想にしては、突飛だ。キリザキがそういうことを考えていたとして、仏舎利とキリザキは繋がった。だが、女性たちが行方不明になったり、化け物が現れたりしたこととはまだ接点が見つからない。  ひとりきりになった部屋で考えをめぐらせていたが、そうこうしているうちに塚田が自ら呼びに来た。残っていたアイスティーを飲み干し、部屋を出た。 「流れとしてはね、絡み撮って最後まで通すから。そのつもりで、少し小芝居やってフェラシーンから入るよ」  やりませーん。声には出さずに心の中で答える。  潜入の成果はほとんどあげられてないが、さすがに好きでもない相手のモノを咥えたり入れられたり(実際には入れられないかもしれないが)までしようとは思わない。  どうやって抜け出してやるかな、と考えていると、背後でかすかな悲鳴がした。  足をとめてそちらに注意を向けると、今度はさらに大きな声で、はっきりと聞こえた。 「いや、いやあ! いぎゃああ!! ごあああ!」  ただならぬ声である。女の声だが、喉をつぶしそうな絶叫だった。撮影をしているにしてもこのような声は不要だし、演技にしては切迫感があった。 「ちっ、派手にやってやがるな……こっちも音拾っちまうじゃないか」  塚田が唇をとがらせてつぶやいた。口ぶりから、悲鳴の原因はだいたい把握しているようだった。  理恵の足は、すでに床を蹴っていた。  脱出のタイミングの好機でもあったが、そんな打算よりも先に足が動いていた。惨めな声で判別はつかないが、おそらく声の主はさっき会話をしていた、みはるという女優だろう。放ってはおけなかった。  声は、か細く、また激しく、壊れたラジオのようにして続いている。  ドアを跳ね飛ばすようにして、理恵は部屋に躍りこんだ。  部屋の中央にみはるがいた。撮影中なのだろう。周りに照明や撮影のスタッフが陣取っている。  みはるには、背中から羽交い絞めにする男が一人、そしてみはるに何か飲ませようとする男が一人ついていた。二リットル以上入りそうな大きなボトル。そこに入った白い液体をみはるは飲まされようとしていた。 「がぶ、がばぉ、っ! むうううう! べえええ!」  みはるは身体をしっかり押さえられているので、なんとか吐き出そうとすることでそれに抵抗している。 「あんたら……何してんのよ!」  急に入ってきた理恵に気を取られたのだろう、その隙をみて、みはるを羽交い絞めにしている男から逃れた。 「げぶっ、ごぼぉ、ぼぉ、ぼ、おおおお……」  みはるは四つんばいになると、いつまで続くのかと思えるほど胃の中のものを吐き出した。 「あーあー……この牛乳とあとオレンジジュースでミックスジュースの出来上がりだったのに」 「何のつもり。馬鹿じゃないの」  理恵はみはるに駆け寄り、その背中をさすった。嘔吐はひとしきりおさまったようだが、それでもまだ吐き気は残るらしく、何回もえづいて口から吐瀉物を垂らしたままにしていた。 「馬鹿はこの女のほうだよ。こんな年まで続けてるから事務所にも売られるんだ」  牛乳を飲ませていた男がそう言う。おそらく、この撮影の監督であるらしい。 「売られる……?」 「そ。好きなようにしてくれってさ。邪魔者なんだよ。年増がいつまでもいると若い子の邪魔になるんだ。馬鹿な女をこうやっていじってるとな、下手にとうの立った裸やカラミ見せるより売れる。最後に少しは利用価値を出してやるんだから感謝されてもいいぐらいだ」  塚田がゆっくりと歩み寄って、理恵の方に手をかけた。 「うちと事務所の間では話がついてることなんだ。さ、迷惑になるから行こうね」 「いや」  塚田がつかんだガウンごと脱いで、その手から逃れた。 「おいおい」 「その女優さんに食わせてもらってるのもあなたたちじゃないの。ゴミにたかるハエ以下だわ」 「言わしておけば……つまみ出せ」  監督らしき男は、さっきまでみはるを羽交い絞めにしていた男に指示を出した。二の腕がハムのように太い。黒のビキニパンツ一枚で、首からタオルを提げていた。 「ふん」  理恵が腕をかすかに動かすと、男の提げたタオルに火がついた。 「あ? あちちちぢ」 「それ以上近づいたら、股間からぶらさがってる方を燃やすわよ」  その部屋の男が、みんなたじろいだ。監督ふうの男が、何かを思い出したようにこう呼ばわった。 「おい! 出て来い! 出番だ」  誰か……呼ぶのか? なみの人間なら恐れることはないが……。理恵はようやく立てるようになったみはるを引き寄せ、来訪者を待ち構えた。 「なんや、暇なバイトやと思ってたのに」  あくびをしながら奥のドアからひとりの少女が現れた。  その少女は肩にかからない短い栗色の髪で、細い銀色のフレームの眼鏡をかけていた。  小柄である。この部屋の誰よりも身長は低かった。  しかし、それを補って余りあるほどに彼女の胸は成長していた。果物をその部分に隠しているようにも見える、球形の張りをブラウスごしに見せている。スカートは濃緑一色のシンプルなもので、学校の制服かと思われる。  面倒くさそうな態度を見せてはいるが、その表情は何かトラブルが起きたことを察して面白がっていることがうかがえる。 「まさか、キリザキさんの言うようなことが起きるとはな。頼むぜ、あんた」 「ん。お給金もらっている分はな。で、その暴れてる奴は……あれ」  眼鏡の少女は、理恵に気づいたようだった。  理恵はその前から眼鏡の少女が何者であるかを把握していた。  竹中智。理恵と同様、力を持つ特殊な人間である。 「どうした、知り合いか」 「ンなことあるかい。けったいな格好しとるなと思っただけや。──そこの。大人ししぃや」  空を斬るように、智が手を動かした。ふぅん、と小さな風音の後、理恵のすぐそばにあったカーテンが真っ二つに断たれた。 「ふん……やれるもんなら」  理恵はすでに炎の「素」を集めていた。掌に集めたそれを、打ちつけるように床に叩きつける。 「やってみなさいよ!」  ドヅゥゥゥゥッ!!  床のコンクリートを砕き、その細かな破片が舞い上がった。あたり一面がその煙に巻き込まれ、視界が白くなる。 「逃がさんで」  智は自分のからだの周囲に風を張って、わずかに視界を確保した。理恵がいた場所に、大きな穴が見える。そこから下に行ったのだろう。  ためらわず智はそこに飛び込んだ。下の階の床で、風の力を使ってふわり、と着地する。そこは物置にでもなっているのか、隅っこにいくつか機材や小道具らしきものを置いているだけの広い部屋だった。  そして、理恵もそこでホコリをはたきながら立っていた。  智が着地したのを見て、通ってきた穴に向かって再び「素」を投げる。パンという軽い爆発音とともに、上階は今度は黒い煙で満たされた。何人かの咳をする声が聞こえてくる。 「何してるんよ」 「いやそれこっちの台詞……バイトとか言ってたけど」 「せやのよ、用心棒みたいなことって言うから。一日でこんだけ」  智は手を広げて見せた。五万円だろうか。 「うーん。こっちはこっちで野暮用で……じゃあ、十出すからこっちについてよ」 「お金でほいほい動くと思われたら心外やなあ。別の条件で」 「別って?」 「そんな格好して鈍いふりせんでもええやん、な?」  智は急にからだを寄せて、理恵の耳のそばでそうつぶやいた。手がするりと蛇のように伸びて、理恵の尻を撫でまわす。 「やっぱり、そうなるの?」 「この格好で、ぜひ」 「はいはい、わかりました」  理恵は子供の悪戯をとがめるように、まだブルマの手触りを楽しんでいた智の手をつかまえた。 「──でも、まずここ抜けてからね。あと、私の脱いだ服をなんとか手に入れてくれないかな」 「着てみていい?」 「……洗って返してくれるなら」  その返答に、智は目を輝かせた。 「ん! おけ! じゃあ戦ってるふりだけしといて」 「おけ」  智の風に乗せられて、穴をくぐって二人で元の部屋へと戻った。距離をあけてから、智は空気の渦をつくってそこに砂煙を吸い込ませた。視界が元へと戻る。 「へ、もう逃がさんで」 「しつこいなぁ……あんた何者なのよ」 「降参したら教えたるわ」  小芝居の後、二人はジャブのような攻撃を繰り出した。理恵は光だけの炎球を、智はものを斬る力のない空気弾を、お互い当てないように発して動き回る。  他の人間はさっき理恵が床を砕いているのを見ているため、いまの攻防がそういった小手先のものだとは気づかない。流れ弾を食らわないように、部屋の隅でうずくまっているのがやっとだった。  そうしているうちに、理恵は窓を大きな影が横切ったのに気がついた。  智に目配せをすると、彼女はその窓のほうに移動した。 「くたばりや!」  智がくるりとスケート選手のように手を広げて一周すると、轟という音ともに竜巻が起こる。それは床を削りながら、窓際にいる理恵へと向かっていった。  この竜巻には智の手心が加えてある。破壊力は高めているが速度は遅く、目で見て充分に避けることができるように、だ。  もちろん理恵はかんたんにそれを避ける。  竜巻はそのまま壁へと向かい、窓を、壁を削った。そこには人が三人ほど横に並んで通れそうな穴が開いた。  その向こうに、大きな影が見えた。何かに乗っている男。  男がこちらに向かって、折りたたまれた紙切れを投げた。紙切れは次第に姿を変えながら、智が開いた壁の穴を通り抜けたときには、人をふたまわりも大きくしたような大猿の姿になっていた。  大猿に理恵が近づくと、その猿臂を伸ばして理恵をつかんだ。大猿は軽々と薪でも拾うようにして理恵を背中に放り投げる。 「あの女の人もお願い」  理恵が大猿の毛むくじゃらの首にしがみつくようにして、そう指示をした。  大猿は無言でみはるの位置まで跳躍し、素早くその胸に抱くと、またもとの位置に戻った。 「じゃ。おじゃましました」  大猿は来た穴から外に向かって、その太い足のバネを最大限に利用して跳んだ。そこには大猿をも余裕で乗せてしまう漆黒の大鴉が浮遊し、神主のような格好をした眼鏡の男が座っていた。 「間に合ったかな」 「お手数かけます」 「君に何かあると、栄に怒られるからね」  男は国松定文だった。理恵が智とやりとりをしている間に、靴の中に隠していた犬笛を吹き、それを聞きつけての救援だった。  定文が大猿の頭を撫でると、きき、と満足そうな鳴き声を残し、紙へと戻った。紙は折り紙のように折って形が作られており、頭と手足がある。さっきの大猿の形を模したように見えた。紙を式神として使役する、定文の力の顕現だった。  大鴉は定文と理恵、みはるを乗せ、西の空へと飛び去っていった。  一方──。 「おい! なんとかして追いかけろ!」  呆然としていた塚田が、気を取りなおして智へと怒鳴りつけた。 「いたた、いたた、足くじいた。走られへん。ひょっとしたら骨折れたかも」 「……役にたたねえな」  智は足をひきずる真似をしながら、これから理恵の脱いだ服を回収してどう楽しむかで頭がいっぱいだった。 第五章 変身!? かわいい子猫ちゃん  AV撮影現場に乗り込んでから翌々日。  昼過ぎに理恵宅のインターホンが鳴った。モニタで相手を確認すると、ゆっくりとドアを開けた。 「来ちゃった!」  尻尾を振らんばかりに喜色を露わにしている智がそこに立っていた。姿は先日と同じ制服だった。片手に紙袋、もう片手に丸みのあるカバンを提げている。 「とことん笑顔ねえ……それに来ちゃったじゃないわよ、変な口調でさ」 「なんや、せっかく可愛くしてみたのに。あーあー、約束違うで。約束破ったらハリセンボンやで。ブルマ! ブルマ!」  不穏な言葉を大声で叫びだしたので、玄関での立ち話をやめて招じ入れた。 「そんな格好で部屋をうろうろできないっての。……ほら、ちゃんと穿いてるでしょ」  理恵がスカートをめくって見せると、その下には前日に理恵が撮影衣装としていたブルマが履かれていた。 「あーあーあ、そんな簡単にめくって見せたらあかんてー」 「めんどくさい子ねえ」 「あ、あとこれ。お返しします。テープとかもうまいことナイナイしといたで」  紙袋を差し出す。中には、先日理恵が現場で脱いだ服がきれいに折りたたまれて入っていた。 「やっぱり……着たの?」  こくこく、と智は小刻みにうなずいた。 「着ただけとちゃうねんけどな」 「まあ……特に深くは気にしないことにするわ」 「一回だけのつもりやったんやけど、何回もしちゃってん。理恵の服着てると思うと興奮して……」 「いま急に耳が日曜日になったわ」 「大丈夫、汚れてないし。あ、あ、ほんまのとこいうとちょっと汚れてんけど、洗ったからシミにはならんよ」  何かシミの原因になることをしたのだろうが、理恵はあえて考えないことにした。 「まあ、いちおう私の知ってることをしゃべっとくわ」  理恵が出した紅茶を一口すすって、そう智はしゃべりだした。  しばらくキリザキの周囲を探っている者がいるらしく、それも普通の者ではなさそうなので、特殊な力を持った人間を探していたらしい。そこで雇われたのが智だったというわけだ。智もキリザキ本人と会ったことはないという。 「──でもな、こういうの手に入れてきたんよ」  智が取り出したのは、地名が書かれた紙だった。 「もしかして、キリザキの居所?」 「うん。私も電話で漏れてた声を聞いただけやったから、確かやないかもしれんけどな。そこでずっと今は引きこもってるらしいわ。少し前まではどんなに忙しくても現場に顔を出したがる人間やったらしいから、周りの人間はいぶかしがっとった。病気か、っちゅう噂もあってんけど」  何かこもってやっているということか? それとも外に出られないような姿になっているとか? 鼻の頭に手をやって考えていると、智が持ってきたカバンの中から、にゃあ、と声がした。 「お、出してやらんとな」  智がカバンの側面のジッパーを開けると、小ぶりの黒猫が周囲をうかがいながらそろりと顔を出した。 「キーオだっけ? なんで猫なんか連れてきたのよ」  黒猫は用心しいしい、あたりの物の匂いを嗅いでいる。 「ちょっと理恵もそんな格好して乗り気やし、興を添えようかと思てね」  ちらり、と理恵のスカートをめくってブルマを穿いているのを確認する。 「あんたが着ろっていったんじゃないのよ」 「まあまあ……理恵も絶対喜ぶから。キーオ、こっち来ぃ」 「バター猫とかは御免よ」 「慌てなさんな」  おとなしく智の目の前に座った黒猫に向かって、呪文を詠唱する。その狭い額に指を沿え、最後の句を唱えると、しだいに影が立ち上がるように変化していった。 「え? え?」  ふぁさっ。つややかな黒髪が揺れる音。黒猫が転じたのは、一糸まとわぬ、か細い手足が人形のような少年だった。智も百五十センチもなく、背が低いほうだが、その智と比べても頭ひとつ低い。 「ぼく……ん? にんげん?」  ぱちぱちと目をしばたかせ、自分の変化した身体を珍しそうに見ている。指を動かしてみたり、猫らしく体のあちこちの匂いをかいでみたりもする。 「と、智、……これは……やばいわ」 「好きでしょ。好みわかってるでしょ? ふふん」 「この子、何歳……っていうか、猫だから関係ないのか。うわ、かわいい……」  おそるおそる、理恵は少年の身体を触ってみる。 「ん? おねちゃん?」 「キーオ、このお姉ちゃんは理恵おねちゃん」 「りえ、おね、ちゃん」  ぶっ。 「あ。ごめん、鼻血出た」  理恵は、急いで手近なティッシュを鼻につめた。 「変態やなあ」 「人の嗜好にケチつけないでよ……あ、でも、これはほんとにキてるわ……」  智がぽんぽん、と自分の膝を叩く。その動作にキーオは素直に、すべりこむようにして智の膝を枕にして寝そべった。 「あ、いいな。キーオちゃん、こっち」  理恵もそれを真似して自分の膝をぽんぽんと叩く。いいの? と尋ねるように智の顔をのぞきこんだ。 「ええよ。理恵おねちゃんのとこ行き」  二本足で歩くのが慣れないのか、よたよたとしながら歩く。そのたびに揺れる、皮をかぶった小さな性器に理恵の目は釘付けになっていた。  ぶっ。 「あ」 「──刺激が強すぎるわ」  鼻の両穴につっこんだティッシュが赤黒く固まっているのを確認してから、引き抜いて捨てた。 「やったら、ひっこめる?」  智が指差す先には、身体を抱えるようにして少年が眠っていた。 「ううんううん」 「じゃ、楽しまんと」 「うん……じゃあ、キーオちゃん……呼びにくいや」 「きぃちゃん?」  自分の名を、舌足らずでそういう。理恵はそれにならうことにした。 「きぃちゃん……ちょっと、触らせてね」  智は、ちょっとじゃないくせに、と言いかけたが、すでに理恵の顔が真剣なのを見てとって、黙っておく。少年がこくんとうなずくと、理恵はそっと手をその小さな性器に触れさせた。 「ん? なに、するの」  不安からか、びくん、と体がかすかに跳ねる。 「怖くないよ」  そう声をかけて、顔を少年の股間に近づける。皮に完全に覆われたそれは、小さな唐辛子のようでもある。まだだらりとしていて、皮が先のほうに余っている。  理恵はやわらかい果物を扱うように優しく握り、皮をつかんだままゆっくりと上下に擦り始めた。皮を通じて感じるかすかな凹凸で、亀頭のくびれがわかる。こんなに小さくて、すっかり皮をかぶっていても、男性器としての特徴はしっかりと備えている。  急にいとおしくなって、理恵はその先端の皮の余った部分に口づけした。 「あんがと」  その意味はわからなくても、自分が愛されていることは感じている。少年はそう感謝の言葉を口にした。  彼がリラックスしてきたのを見て、理恵はほんの少しずつだが、その手の力を増していく。応えて、少年の性器も次第に大きく、弾力をもちはじめた。 「おちんちん……大きくなってくよ。見てごらん」 「ん……うん。おっきしてる」 「ちゅっちゅ、するね」  理恵は少年の股間にかがみこむ。また先端の皮のあまった部分に、いとおしくキス。初めて食べるお菓子を口にするように、ゆっくりと舌を触れる。じっくりと味わうと、根元まで口に含む。まだ、無理をしなくても口の中に少年の性器はすっぽりと納まった。  口の中で、舌を使ってころがす。まだ勃起しきっていないのか、まだ口の中で形を変える余裕がある。 「ん……、んんっ……」  おそらく初めてであろう感覚に、少年は戸惑っている。自分が感じている、むずがゆさにも似たこれを、どう表現していいかわからない。 「気持ち、いい?」  少年はこくりと首を縦に振る。その頬はかすかに朱く照っている。  もっといっぱい気持ちよくしてあげるね、と理恵は心に思う。そして、その享楽を共にさせてもらう喜びは彼女の身体を内から刺激していた。 「──ひっ……んん!」  自分の股間に違和感を感じて振り返る。  見ると、智が知らぬ間に、理恵の背後に回ってその尻に顔をうずめていた。 「ほら……もともと、そういう約束やったやん。そんな格好でやらしいことしれたら……もう、あかんて」  理恵はもう忘れかけていたが、智のリクエストした体操服姿である。  上にスカートを穿いていたのだが、智がいつの間にか脱がせてしまっていたらしい。  小さめのブルマは、少年の股間のものを口に含もうとかがんだために、おのずと尻を突き出すような姿勢になっている。理恵の豊かな尻肉の大きな二つの丘のあいだに、より小ぶりな陰部のふくらみがはっきりと見えていた。 「ちょっと、智、食い込んじゃうから……」  非難がましくそう言っても、智は止める気はない。かすかに湿り気のあるその中央のふくらみに顔を押しつけ、そこから布地を二枚隔てた向こうの香りを探ろうとしていた。  その鼻息が、やはり布地を通過して、理恵の陰唇へと届く。 「理恵……理恵のお尻好きぃ……こんなおっきくて、ほら……こないしたら、もっと食いこむで」  尻の下肉のほうから、パンパンに張ったブルマの生地をぐいとまくりあげる。同時に、股間の部分は収縮し、より理恵の陰部の盛り上がりを浮き上がらせる。尻肉はその多くを露出させ、ブルマはTバックと変わらなかった。  何か言ってやろうと思ったが、それよりも目の前にある少年の、健気にそそりたったものが大事だった。理恵は再度その幼い肉棒に口を添える。智に気を取られている間に、もうビンビンと音を立てそうなほどに張りつめていた。 「皮、ひっぱられてるね……」  皮の中身が大きくなったことで、皮が極限まで張りつめ、その先端にあいた少しの隙間から、みずみずしいピンク色の亀頭がのぞいている。  舌を伸ばして、そこを優しく舐める。理恵の唾液とは違う、オスの匂いをほのかにさせる液が、その先端からにじみ出ていた。 「……ん、ふぅっ……、りえ、おねちゃん……へんなの……ひっぱられて」 「うん、ん……すぐに楽にしてあげるからね、あん……」  ときおり理恵の言葉に吐息が混ざるのは、智がまだ理恵の股間に執着しているからだ。手と、顔全体を使って、理恵の太股から尻全体を愛撫している。髪の毛で撫でられると、背筋がぞくぞくとする。そんな優しい刺激が来たかと思うと、理恵の陰部を食べようとするかのように、口を大きく開けてほおばるのだった。  そんな強弱の波としてやってくる下半身からの感覚を半ば受け入れ、半ばおぼれないよう受け流し、少年の陰茎を解放することにとりかかる。  少年のものを大きく口にふくみ、今度はより唾液を増してまとわりつかせる。手でつかんで、ゆっくりと根元のほうに皮を押し下げるようにする。少年が痛みを訴えないか、少しずつ、少しずつ。  わずかだが、皮からのぞくピンク色の部分が次第に大きくなる。  初めて外気に触れていく部分を、獣が出産すぐの子を慈しむように舐める。  ちゅっ。じゅ、ちゅーっ、つぷ、ぷっ。 「もうすぐ……むけきるよ」 「ん、ん……、おちんちん、へんなかんじなの、じんじん、してるの……」  ゆっくり、ゆっくりと、少年を痛がらせないように気遣っていたが、理恵は少し焦っていたのかもしれない。早く、少年のむけきったペニスを口に含みたかった。露わになったピンク色の亀頭を、自分の唾液をたっぷりつけて飴のように転がしたかった。このうえなく敏感な部分を舌でねぶることで、幼くあえぐ声を聞きたかった。  皮を引き下げる手に、おのずと力がこもった。それを促すよう、舌の先を尖らせて皮がむける境目をなぞるようにして円を描く。 「む……ん、ん……少しだけ、がまんしてね」  ぎゅっ、と力をこめた。皮が最後の抵抗とピンと張りつめたが、亀頭のもっとも太い部分を、包皮の先端の円が越えた。 「あ! りえおねちゃん! ぼく、むけちゃう! ちんちんむける!」  ぶびゅうっ!!! びゅぶっ!! ぶっ! びゅぶ! ぷっ、ぷぴゅぷっ……ぴぅぐっ。  噴火するような、ほとばしりだった。  皮がむけ、そのピンクの亀頭を露出すると同時に、極濃のゼリーにも似た半固形の精液が少年の頭を越える高さで噴出した。  痙攣しながらの射精を最後の一滴が終わるまで、唖然と理恵はその先端を見つめていた。  その量と勢いで、理恵と少年に降りかかるように濃い雫を垂らしていた。  口元にかかった白濁した精液を、理恵は舌を伸ばして舐めとった。  粘りが喉にからみつく。何度も自分の唾液を混ぜ合わせて、やっとぜんぶ飲み干した。 「しろいの……でた」 「いっぱい、でたね。気持ちよかった?」 「ん。おちんちん、もっとちゅっちゅして」 「いいよ。皮むけたから、もっと気持ちよくなるよ」  ふたたび、理恵は少年の股間に顔をうずめる。精を放ったペニスは、露呈した亀頭からオスの匂いを漂わせている。その匂いが理恵の恍惚感を高める。  むけたとはいえまだ成長途上のためか、いったんむききった皮が少し余って、亀頭の半分を隠していた。理恵はそれを指で下に引っ張り、亀頭をすっかり露出させなおすと、その形を確かめた。おもむろにイチゴを一気に口にほうりこむように、濡れて輝くピンク色の亀頭をすっぽりと口にふくむ。 「ふうぅ、にゃーっ」  亀頭全体をやさしく、全体につつみこむ暖かさとぬめりに、少年は足を震わせた。 「……しあわせ。皮の内側おいしい……」  愉悦。少年も初めてづくしの快感に悦びを感じていたが、ただ口で奉仕するだけの理恵も大きな愉悦の波におぼれていた。性にまったく無成熟な、まさに青い果実は熟していないながらも甘みがたっぷりだった。  ぷっ、くぷっ、ぷぶっ、ぷぶちゅ……っ、ぷっくぷ、くぷ、じゅ……。  唇をすぼめ、口の中の粘膜が亀頭のすべてに密着するようにして、小刻みに動かして刺激をあたえる。雁首はおちょぼ口の締めつけを受け、亀頭は唾液のヌルヌルでなぶられ、先端の鈴口は舌でチロチロと舐めあげられた。 「ん、ん! ひゃあ、おちんちん、とろけちゃう、とけてなくなっちゃう……はぅん……、やあ、やあ……またきちゃうよ……ん! いいぃい……」  このままずっと少年のペニスをもてあそび、その噴射をのどの奥で受け止めたくもあったが、理恵は次なる淫楽のステージへと少年を連れて行くことに決めた。  名残惜しそうにペニスから口を離し、こぼれたよだれを手でぬぐう。 「次いくのん?」  理恵の股間に顔をうずめていた智も、それを見て顔を上げた。 「うん……。きぃちゃんは寝そべって」  少年は息も荒く、はあはあと喘ぎながら理恵の言うとおりに仰向けに寝そべった。  理恵がブルマとショーツをいっぺんに脱ごうとすると、智が制止した。 「全部脱いだらあかん」  智の言いつけにより、片足だけ脱いで残した。ブルマとショーツは一体になってくるくるとまとまり、右足の膝のところで止まっている。 「変なとこ、こだわるのね……」  理恵は少年の垂直に屹立した幼いペニスを見下ろし、その上からまたがる形になった。  キーオのペニスは指差すようにして、茂みに隠された理恵の陰唇を向いていた。すでにそこは、これからの行為に向けて準備されていて、多量に分泌された天然のローションが必要のないところまで粘った湿りをもたらしていた。 「私も、してもらおうかな」  そう言って、智も少年の顔の上にまたがって、縞柄のショーツを脱ぎ捨てた。小ぶりな尻の陰になってはいたが、少年の眼前に智の恥部がさらされた。  陰毛が艶やかに生え茂った理恵のものに比べ、智のそこはモヤが霞む程度しか生えそろっていなかった。長い産毛のように細く、色も薄い。陰唇も幼い少女のごとく隠れ、二枚貝のように割れ目だけがはっきりとしていた。 「──ここを、な。お口で舐めるん。優しくな」  智はみずからの指でその柔らかな二枚貝を開く。ちゅく、という水音をたてて、うす桃色の淫液にまみれた陰唇がやっと顔を見せた。 「きぃちゃん、見える? 私のおまんこと、きぃちゃんのおちんちんがごっつんこするよ」 「お、まんこ?」 「そう、女の子の気持ちのいいところ。気持ちいいところどうしを、いまから擦りっこするんだよ」  智が腰を下ろす前に、理恵は性器が触れ合うところを少年に見せたがった。少年があごを引いて自分の股間を見ると、理恵がゆっくりと腰を下ろして、ちょうど触れ合ったところで止めた。 「ひぅん! ん……ちゅるん、ってした……」  亀頭の先端が、理恵の愛液でコーティングされた陰唇に触れた。油に滑るように亀頭が動き、理恵はそれを手で戻して膣穴のところに戻した。このまま腰を下ろせば、一気にペニスを膣内に呑み込める位置だ。  性器と性器が、わずかに触れ合った場所から熱を交換する。特に少年のペニスは湯気をたてそうなほどに熱をその先端から伝えていた。 「見とき。お姉ちゃんの中に、入っていくとこ」 「う、うん。いたくない?」 「痛くないし、怖くもないよ。私にまかせていて……いくよ」  つぷ、っぷ。 「んっ! は! はふぅ……ふう」  ゆっくりと腰を下ろし、亀頭の半分が理恵の粘膜に包まれた。その感覚は先ほどまで口で行われていたものに似ていたが、はるかに粘りのある汁がヌルヌルとまとわりついた。少年は思わず目を閉じて、ペニスから運ばれる、しびれに似た感覚を受け止めていた。  ぷぷ、っぷ、ずずぶ……じゅっ。 「んんっー! 入ってく、入ってくよ、おちんちん入ってっちゃう」 「あ、あ、きぃちゃんの熱いよ、カチンカチンで、うふぅ、ん……、もうだめ……我慢が……」  ぶぶっ、ずぶちゅちゅ! 「あっ! ああんぅ! (びくぅ!) ん! ん! (びくびくっ!)あっ、出てる、また出てる、ん! んん! また出る! (びくんっ!)んあああふ、あふ、出る! (びくぅ、びくっ)ん!」  ぶっ、ぶぶっ、ぶびゅっ! ぶぶびゅ! ぶっびゅ!  一気に理恵が腰を下ろし、瞬間に少年のペニスは根元まで膣の中に包まれた。少年の小ぶりだがまっすぐに勃起したペニスは、理恵のヒダ状になった肉壁を押しのけてその中に納まった。 「ん! うふぅぅぅっぅん……あ、あ……根元まで……全部入って……中で暴れながら射精してる……」  少年は連続的に三回、腰を跳ねさせて、理恵の膣内で精液を噴射した。膣奥が叩かれるように感じるほど、少年のほとばしりは勢いがあった。その量も多く、あふれかえった精液が二人の結合部で水溜りをつくっていた。  ただ水とは違いドロドロとして、フライパンに乗せたホットケーキのタネのように厚みをもって溜りとなっている。 「もう、クタクタ?」  智が自分の股間から、キーオの顔をうかがう。少年は顔を上気させて、長距離走を走りきった選手のように息を荒く吐き出していた。 「ん……すごくて……はぁ、は……」 「まだ、いけるよ。ほら、こんなに出したのに硬さ変わってないもの」  理恵はゆっくりと腰のグラインドを始めた。理恵の茂みの中から、膣内に呑み込まれていたペニスがゆっくりと顔を出す。  ぶっちゅう……ぶっぷ、じゅう……ぷちゅ……。 「は……っふ……きもちぃ……おちんちん、とろとろで、おまんこ、あったかい……」 「ん、ん……、いい、きぃちゃんのおちんぽ、おふっ、ちっちゃいけど、すっごくカタくて、ぐりぐりえぐれるよぅ……」  また二人は、他に何も考えられないように、快感をむさぼり始める。 「んじゃ、私もこんどこそ」  智はキーオの顔に腰を下ろす。しだいに速度を増す、理恵の腰使いに目を閉じて快感を受け止めていた少年は、急に口元によせられたヌルリとした感触に驚いた。 「ん? んむ?」 「そこ、ぺろぺろすんの。さっき理恵お姉ちゃんが君にしてくれたみたいにして、私も気持ちよくさせて」  よくわからないながらも、少年は智の性器に奉仕を始めた。智の言うように、さっき理恵にされたことのお返しと考えて、丁寧に、初めて食べるお菓子のように舐めた。  縦にくっきりと入った肉スジを、下からゆっくりと舐めあげる。次に、その奥を探るように舌先でチロチロと刺激した。 「ん……そんな感じ、ん……あふ……もっと、いろいろしてみてもええから」  果実が絞られるようにその縦スジから淫蜜が滴ってくる。果実のように甘くはないが、その味は匂いとともに、少年の興奮を高めていった。 「んぷ、おねちゃん、あふん……、ともおねちゃんの、おまんこ……むふぁっ、はむ、ん……」  おそるおそるだったものが、唇も大きく開けて、智のその部分を覆いこむような動きも見せる。かと思うと、舌を尖らせて小さなタケノコのような形にして、智の膣へと侵入しようとした。舌を丸めてつくられた赤いタケノコは、攻めるべき場所を見つけたとばかりに激しく出入りをした。 「あ、そんなこと覚えて……あかん子、んっ……それいいよ、つぷつぷ私のあそこ入ってる……ほんまにあかん子……っう、ううふ」  キーオのするがままに任せていた智だったが、少年の意外な健闘に、みずからも腰を動かせる。少年の口の動きをもっと強めようと、押しつけ、性器を顔にこすりつけるような動きをする。少年は口の周りから鼻、あごの辺りまで、智がこぼす淫水に濡らされていった。  理恵と少年の乱れ方に、一歩置いたところから見るつもりだった智だったが、すっかりとお互いを自分の性感を高める存在として求める三角形の中に組み込まれてしまっていた。  少年は夢中で智の股間にむしゃぶりつく。  智はそれでも足りないとばかりに腰を前後させて、鼻にクリトリスを擦らせるようにした。 「ん、ん……クリ、当たって……いい、ああん! べろべろして。わかる? おまんこの上のほう、かたく尖ってるとこ、んんっ! それ! そこ、女の子のおちんちんやの、んっ、じょうず……んふ……」  智は声を大きくあげながら、上に着ていた服をブラジャーとともにはぎ捨てるように脱いだ。そこから現れたのは、グレープフルーツを思わせるようなハリのある大きな乳房だった。乳輪は紅潮し、その先に乳首が勃起して尖っている。片手で乳房全体をもみしだき、その片方を持ち上げて、硬くしこった乳首を激しく吸った。 「んっーー! ん、ああふっ! 乳首好き、おっぱいも、おまんこも気持ちいぃ、あん、あん、あむ……はぅはぅう……どうしよ、私、変態になる、うむふぅぅぅう!」  理恵はストリップダンサーのような怪しく激しい腰使いで、しとどに愛液を吐き出し続ける膣壁を、少年の精一杯に怒張したペニスでえぐらせ続ける。 「また、おちんちん、あっ、あああ、っん! お、大きくなったみたい、さっきより奥まで、きてる、あ、うあっふ! あんあんあんあ、ん」 「ん、んむ、うぷ、ぼく、ん、また……んー! んー! 出る!(びゅく、びくん!)ん!」  射精の瞬間、ひきつるようにキーオは腰を浮かせた。下からずんと突き上げられたペニスが、理恵の膣奥を強くえぐり、精液が子宮口をまた熱く焼いた。 「あ! ひぃん! ああああっ!!」  理恵も軽く達し、性器同士の返礼ともつかぬ、ペニスへの愛液の放出をした。 「まだ、まだ……いけるやんな……私もイきたいし……」  恍惚で時間を止めた二人を置いて、智が位置を変えた。少年の横に移動し、理恵の足に引っかかっていたブルマとショーツを取る。 「あ……何?」  不審げな理恵に返事はせず、智は顔の前にそれをもってきて、しみになっている部分を見つけるとそこに顔を押しつけた。 「理恵の……理恵の匂い」 「何……してんのよ」  理恵は取り上げようとしたが、智は力を入れてそうはさせない。 「これ、持って帰ってええやろ、な……? ほら、またこの子呼んでくるから」 「うー」  理恵はいささか不満げではあったが、首を縦に振った。 「よっしゃ! じゃ、続きな……理恵、全部脱いで下になって」  理恵はそう促されて、全裸になって仰向けに横になった。足を開かされて、その上から智が重なる。 「ちゅう」 「ん……ん」  舌を絡めあう濃厚なキス。少年のペニスの匂いの残る理恵の唾液が、智の唾液と混ざり合う。 「智の胸……重いよ」 「うらやましい?」 「そうでも……んん、乳首……はぅ、ん」  智は腕を立て、下を向いた乳首が理恵の乳首に触れるようにした。 「あっ……んふぅ、ん、こっちでも……感じたいやん」  そう上体を整えると、智は最後に足を開いた。  キーオからは、智の肛門を含めた陰部が、照明にてらされてはっきりと見える。さっきも間近では見たが、近すぎたこともあってよくはその形が見えなかった。  やはり智の性器はおとなしく、ほとんどただの縦の割れ目のように見える。ただ、先ほどはわからなかったが、その端のところに少しだけ顔を出した突起部があるのを見つけた。智が「女の子のおちんちん」と呼んでいた場所だと少年は思いだした。肛門はうっすらと桜色で、少年は口をつけたい衝動にかられた。そして、すぐに実行にうつした。 「あ、そこは……、そこ、理恵お姉ちゃんの好きなところやから、ん! んふ……私はええんよ……」  ちゅっちゅ、とキスをしたあと、少年は身体を引く。目を理恵の陰部に転じた。  違いは感じていたが、こう並べてみるとその違いははっきりとしていた。理恵の陰唇は花を思わせるようで、その花びらが発達している。その端にも、「女の子のおちんちん」を見つけることが出来た。理恵のそれも智と同様に硬くしこって尖り、花びらの端から顔を出していた。 「智から……してあげて。わかる? まず智お姉ちゃんの腰を抱えるようにして。そう、それでいい。ちょうど、おちんちんがいい高さだから、そのまま、おちんちんを智の割れ目に向けて」  宇宙船が着陸を行うように、慎重に、ペニスは前に進んだ。ペニスは全体を淫液のベールでつつみ、半分皮から姿を見せた亀頭がつやつやと鮮やかにピンク色を輝かせていた。 「片手でつかんだほうがええかな……うん……、あ、当たった」  ペニスの先端は到達すべき女性器へと到達した。といっても、少年からは割れ目しか見えず、このまま進んでいいかわからなかった。 「そのまま、ぐいって行っていいよ。……いっぱい濡れてるから、入ってくれると思う」 「ん。……じゃあ、ぐいってするね」  キーオが少し腰を突いた。その先端は少し凹みを感じたが、まだ抵抗を感じた。 「うん……そこで合ってる。だいじょうぶやから、もっと……思い切ってぐいってして」 「わかった……ん!」  ずじゅぅぅうっ!  少年が智の腰にしっかりと手をあて、それを引きつけるようにして腰を突き出すと、やはり締め付けるような抵抗があったが、智の膣内に侵入することに成功した。 「あ! ああ……ぎゅっってしてる……また、出そうになっちゃった」 「んむぅっ、ん……入ったね……ほんまや、すごい、熱い棒みたいにカチコチやん……」  少年のペニスは智のいうように、普段のぐにゃぐにゃとしている姿を思い出すことができないほどだった。  しかし少年も智のあまりの締めつけに驚いていた。さきほどまで理恵の膣内しか知らなかった少年だったが、それとはまた異なっていた。  手で思い切り握られているような、ぎゅうぎゅうとした締まり。動かなくても、その膣壁が呼吸をするようにぎゅ、ぎゅっと断続的に締め上げてくる。 「ともおねちゃん、ん、ん……はぅ、きゅっきゅってするの……。ちぎれちゃうよ」 「智のは、狭いらしいからね」  もちろん理恵はそれを実感したことはない。 「少しずつでええよ、動いてみ」  智にうながされて、少しずつ前後に腰を動かす。  実際のところ、少しずつしか動かせることができなかった。理恵は少年のペニスにとろかせるような快感を与えてくれたが、智のそれはきつくしごきあげるように責めあげた。 「は、はぐ、ん……ん、ん、ふぁ」 「ん。ん……、ええよ……なかなか。ほら、理恵も休んでんと」 「はいよ」  少年のよがり顔をゆっくりと鑑賞していた理恵だったが、智の愛撫を開始した。  理恵の体にのしかかっている乳房を持ち上げて、揉みしだく。 「あん、胸……ええよ。もっと強ぅしてもええから……乳首も」  自分がされると痛くしかないような刺激を、智は乳房に望んだ。ためらいながらも、智の表情を見ながら力を強くしていく。 「智……痛くない?」 「くふっ……ん……うひぅ……ぜんぜん、痛くないから……そぅ、ぎゅっとして」  乳首をつぶすように、かなり強く親指と人差し指で摘んだが、智は痛がるどころか喘ぎの声を漏らした。 「あ、ともおねちゃん、僕、またきちゃう、おちんちんから、あ、あ上がってくるぅ」  智の万力のような締め上げに、少年はもう音を上げていた。それでも少年の腰の動きはいっこうに衰えることなく、貪欲に覚えたての淫欲を味わって極みをめざしていた。 「ん、ええよ、あ、中でびゅびゅってしてええからね。思いきり熱っぃの、ふぁ、中に、中に出したって」  少年は腰に添えていた手を前に回して、おぶさるように身体を智にもたれかけさせた。しっかりと智を捕まえ、腰だけを打ちつけ、ぱしっ、ぱしっと智の尻と少年の下腹部がぶつかる音を小刻みに響かせた。 「ん、うん! ぼくびゅびゅってする! ともおねちゃんとつながって、おちんちんからびゅびゅって出すよ! うぁ、ふぅぅぅ、あああっ!!(びびぅっ!) はぅ、んん!(びゅくっ!) あ、あふぅ、ひぅ!(びびゅうっ! びく、びくっ) あっ、っふう……まだ、まだするっ、はっ、はひっ」 「ああああっ、熱っ、熱いよ、んぁ、出しながら、あん、ああぁ、ちんこ動いてる、はぅ、」  射精する間も、終わっても少年は腰の動きを止めなかった。性器が密着したそのわずかの隙間から、染み出るように白濁液が滴っていく。 「きぃちゃん、また、私のほうにも入れて、智に射精したんだから、また私のほうへ」 「ん、うん! りえおねちゃんとこ入れるよ、りえおねちゃんにも出したげるね!」  じゅぶ、という音ともに少年は白濁液をまとわせたペニスを引き抜くと、幼いピンク色から淫猥に紅潮したそれを、理恵の肉壷に突き入れた。 「んぁああああっ、きぃちゃんのちんぽ、またきた、ん、さっきより激しいよ、ん、ああ、いいいっぃぃ、ふぁ、元気なちんぽ、あふ、あん、あ、あぐぅ、んぅ、あああっ!」 「理恵、最後、うちもいっしょに理恵とイきたいの。やから、私のクリいじって、クリいじって、あああぅ、あ! あああっぃぃいいい! そう、あふ、キーオと理恵と、私の三人で、いっしょにイくの、クリいじって、おっぱいもして、いっぱいして!」  少年は狂ったようにただひたすら腰を前後に突いて、理恵の陰部を掘るかのようにピストン運動を続けた。理恵はその掘削に淫壁を大いにもてあそばれ、その乱暴な動きをも隠微な性感に変えるべく多量の愛液で動きをスムーズにさせる。  理恵の口と指は忙しく、智が顔の前に垂らした乳房を揉み、乳首を噛み、乳輪を吸った。片方の手は智の股間へと伸び、つつましやかな陰唇から顔をひっそりと出したクリトリスを転がすように指先でもてあそんでいる。  智はそれでも興奮が足りないというかのように、さきほど理恵から奪い取ったブルマとショーツを丸めて、そこに顔をうずめて理恵の淫らな匂いをいっぱいに吸い込んでいた。 「あ、智、何してんの、ふぅう、あふあっ、ん」 「理恵の、理恵の恥ずかしい汁のついた匂い、ん、すごくええの、この匂い嗅いだまま一緒に理恵にいじられてイくの、ん、ああああああっ、好き、理恵、好きやの、おかしいやろ? でも、ああ、好きやの、止められへんの、ああっ、気持ええの!」 「ああ、おねちゃんすき、どっちも好き、りえおねちゃんのすき、ぐちょぐちょですき! ともおねちゃんの、きつきつですき! ああ、すき! どっちもすき、ちんちんきもちよくて、おまんこすき!」 「はぁ、ん、お姉ちゃんも好きだよ。きぃちゃんのおちんちん好きだよ! いっぱい好きにさせて、いっぱいどぴゅどぴゅ出して! あ、おちんちん、くる、くるぅ、奥にぎゅんぎゅんくるぅ!」  ずっ、ずじゅっ、ぶづっ、ずーぅっ、ぐぶ、ぶっちゅ……。  三人の嬌声と、性器の立てる音が室内に響く。三人とも目はうつろに半開きになり、口もしまりなく開いて喘ぎ声と唾液をだらしなく漏らした。 「ぼくも、もうでる、でそう、もうでちゃう、ふにゃぅ! ん、びゅくん、ってするの、あ、あ、あぅ、くふ」 「私ももうちょっと、理恵、私のおっぱいとクリ、力いっぱいぎゅってして、一緒に、そしたらすぐにイくから、理恵イくときにして、いっしょにイけるから」 「うん、智、あ、もう私きそう、ん、イっちゃいそう、あ、ふぁ、んんんっっ! くぅ、もう、きちゃうよぅ……あ、いん、いいんっ、智、いくよ、ぎゅってするよ!」  高まりが最高潮に達する寸前に、理恵は大きく口をあけ、乳輪をすっぽり隠すようにして乳首もろとも思い切り吸った。それと同時に智の股間に伸ばした指で、クリトリスをひねるように指に力をこめた。  びくっ、びくっぅうっ!  スイッチが入ったように、智の全身が小刻みに揺れた。その動作の瞬間のうちに、理恵は頭の中でなにかが弾けるような爆発を受け止めていた。 「あ、あ、いぃ、い、いっく、あふ、あ、ああああああああぁぁぁっっ!!!」 「理恵、理恵好き、んー、んっ、理恵っ、すっきぃいい! んんふああぁぁぁぁっ!!」 「りえおねちゃん、ともおねちゃん、あ、おちんちんもうだめ、で、でっるっぅっぅっっっ!!!」  どぶっぅっ、ぶびゅゅっ! ぶびゆっぅ!! びっ!! どびびゆっ!  理恵の膣奥で子宮口を叩くように精液が打ち込まれた。同時に、最後のほとばしりを理恵も返すように、ぶしゅ、びゆっ、と汁を飛ばし、大きな染みをシーツに作った。  少年のペニスは理恵の中から抜かれても、まだ射精が止まらず、智の尻と、理恵の太股にいくつもの精液の溜りを、雨降り跡のように残した。  三人とも、短距離走を全速力で走りきった後のように、床にへたりこんで、荒い息をついていた。 「すご……かったね」  智が這うようにして理恵に顔を近づけ、キスをした。 「ん、うん、また、しようね」  しゅぅっ、と空気が抜けるような音がした。理恵がそちらに目を向けると、キーオの姿が次第に縮みこむように、小さくなっていた。 「あ、あれ?」 「今日はおしまい、やね」  そして、最後には黒猫の姿に戻っていった。  にゃあと一声鳴いて、理恵と智に、軽く頭突きをするように頭を摺り寄せて、のどをゴロゴロと鳴らした。 「これはこれで」 「可愛いやんな」  二人と猫は、そのまま溶け込むようにして、はねのけていた布団をかぶって眠った。 「乗りこむんか」  眠りから覚め、シャワーを二人で浴びた。夕食にとったピザにかじりつきながら、智がそう尋ねた。 「うん」 「国松さんとか、栄坊ンとかは知ってんの?」 「私からは言ってない。でも、わかってそうだな」 「頑固やからな、君ら。つき合ってるんやったら、もっとベタベタしてもいいのに」 「ん。でも、お互いが、お互い大事にしすぎてるんだよね。あいつの世界、っていうのかな。それにあんまり手出ししたらいけない気がして」  そう理恵が言うのを聞いて、智はしばらく無言でピザを咀嚼していたが、急に何かがストンと落ちたように、うんとうなずいてオレンジジュースをすすった。 「まあ、そういうのもあるんやろ」 「なんか、ごめんね」 「何謝ることあるんさ。まあ、そのほうが、こうやって私もいちゃいちゃできるからな。またキーオ連れてくるわ」  ぶっ。 「──あぁ、また鼻血鼻血。一昔前の漫画みたいな子やな」 第六章 決戦! 本物はどっち?  山間の道を幾十回も縫うようにした先に、その建物があった。  理恵は定文から借り受けた式に乗って山中を来た。車でならば、麓から一時間はゆうにかかっただろう。  メルとともに建物から少し離れたところで、式から下り、狛犬に似たそれが山を下りていくのを見送った。 「さて、何が出るやら」 「ここからどうするの?」 「正攻法で」  理恵はそう言うと、玄関へとおもむろに歩を進め、ベルを鳴らした。  しばし待つ。 「留守かな」 「いや、ほれそこに車あるし。こんな山の中に車を展示しておく酔狂な御仁でなければ、これに乗って何者かが乗ってきたってことよ」  あと十を数えたら、どこかから侵入しようと決めた時に、ドアがゆっくりと開いた。脂の回った前髪を目の前に垂らした陰気な顔がそこから覗く。 「出演の売込みにでも来たのか」  男の顔色は土色で、病的だった。血色が薄く、出来の悪いロウ人形のようだった。 「自分を安売りするつもりはないの」 「お前だろう。この間、うちのビルでひと暴れしてくれたのは。えらい損害だ。雇った奴も役に立たずに逃げちまう。散々なことだ」  そう言う男、切崎徹の言葉に怒気はなかった。  むしろ仔犬をあしらうような余裕さえたたえていた。  切崎は鼻を鳴らして、ドアを開けたまま戻っていった。建物の中は暗い。その闇に溶け込むように切崎は奥へと移動する。 「お邪魔するわ」  理恵はその後へと続く。メルがドアを閉めると、建物の中は薄闇が支配した。すべての窓はカーテンかブラインドが閉じられていて、それを通した光だけがかぼそく床を照らしていた。  照明らしきものはあるが、どれとして灯っていない。人工的な光は一つとしてなかった。  切崎は慣れているのだろう、ゆっくりと障害物を避けて奥へと進んでいく。  外から見たより、中はかなり広い。  理由のひとつとしては、二階がなく、吹き抜けになっていたからだった。  人が生活する家というよりも、礼拝所のようだった。  その最奥からは、ただならぬ臭気が漂っている。  理恵も何回か体験した、死地に漂う空気。地面に横たう腐肉からただよう匂い。  切崎が立ち止まった周囲には、その匂いの原因が見てとれた。 「動じないな。普通の子供ではないようだが──何者だ」  おそらく、一人ではないであろう、複数の人間の分断された肉塊だった。そのほとんどが元の形をとどめていなかったが、わずかな髪の毛や指といった部分が残っていた。断面は崩れていて、ただ分断されたのではなく「食い散らかされた」という形容が近かった。 「ただの女の子よ」 「ぬかせ。どこまで知っている」  理恵は答えなかった。ここまで乗り込んできておかしな話だが、数々の事象は明るみになったもの、切崎が何を目的にそれらの事柄を起こしているかが分からなかったからだ。  怪物が女性たちを襲った事件。  その怪物は理恵に倒された後に、仏舎利を落とした。  ほぼ同時期に、仏舎利の盗難が相次いだ。その犯人は切崎らしいこと。  切崎のビデオに出演した女優たちの一部が行方不明になっていること。  目の前にある多くの死体。  それらがすべて切崎につながっているが、その結果どのような形をなすかが見えなかった。 「──まあいい。ここで要らぬ知識とともに消えてもらおう」  切崎が腕を組むと、その瞬間、空気が変わった。  死体には眉一つ動かさない理恵も、ただならぬ予感に総毛立つのを感じる。本能に直接警告する危険だった。  パキ、バキッ、グキグキ、ボゴボゴボゴボゴボゴギボキグキ。  切崎の肉体が、沸騰するかのように波打ちながら盛り上がった。勢いよく膨らんでいく腕や足が、衣服を伸ばし、またたく間に耐えきれず破れていった。  そのとき理恵は切崎の身体を見た。不自然な切り傷が身体を縦横に走っている。  理恵は、そこですべての事柄が結びついてできた形を見つけた。 「あんた、埋めたわね。自分の身体に」 「いま解ったのか」  既に肩から盛り上がった肉が切崎の頭を両側から押し込むほどになっていた。顔はほとんど見えない。それでいて彼の声はよく通った。どこか別のところから声を出しているのかと思われた。 「仏舎利を……自分の身体に埋め込んで……いや、自分の骨と入れ替えたのね。だから大量に必要だった」 「そうさ。もう少しで俺の骨はすべて釈迦の骨になる」 「馬鹿な……そんなことをしても、ただの骨よ? そんな力が……」 「見たんだろう? 実験作を。俺だって、確証もないのに自分の身体を切り刻みたくない。だから、小さな仏舎利を使ってやってみたのさ。幸い、消したい人間はたくさんいた。試してみたらうまくいった。ただ、こいつが大食いなものだから、勝手にどっか行ったがな」  それが、公園で女性を襲っていた怪物というわけか。しかし、仏舎利とはいえ、ただの偉人の骨だ。それがこれほどの力を持っているとは──。 「理恵ちゃん、違う。あれは、何か……別の奴がいるよ」 「別の奴?」 「そう、あの人はその念に囚われてしまっただけ。骨は骨だよ。でもそれを信じさせるようにして、そこにつけこんだ奴がいる。化物を作ったのも、あの人の身体をおかしくしているのも、骨のせいじゃない。そいつがやったことだよ」 「お前、神の使いか。変な匂いがすると思ったが……さよう、光の者よ。私は闇の眷属。黒き官吏、顔の無き者、這い寄る混沌」  それらの二つ名で呼ばれるもの。  理恵は記憶からその名を引き出して、総毛立った。 「──ニャルラトテップ」  理恵が口にしたのは、ナイアーラトテップとも呼ばれる邪神の名だった。「古の《オールド》支配者《ワン》」たちの一柱であり、外なる神の使い。無貌なる秩序の破壊者として、知る物は名を口にするのも恐れる。 「よく知っているな……ならば、このような殻は要らぬ」  グシャ、という、水風船を潰すようなあっけない音とともに、切崎の肉体は弾けた。そして周囲の肉塊が磁石のようにするするとそこに集まっていく。  理恵が次の行動を起こす前に、それは粘土細工が作られるのを早送りで見るように、異形のものとしてそびえ立った。  それは、人間の常識では思いもよらない出鱈目なものだった。  巨大ではない。だが、理恵の知る限りのどんな動物よりも大きく、吹き抜けになっていない普通の建物なら天井を突き破っていただろう。  指のある足のようなもの、木の根のようなもの、タコの腕のようなものが身体を支えている。それらは絡まりあい、それぞれが支えているというよりは、その足らしきものたちが固まりとなって台となっていた。  身体もまた、毛の生えた部分、ぬるぬるとした粘液でつつまれた部分、あちらこちらから突き出た腕、または羽根、ヒレのようなものと、まったくとりとめがなかった。  顔らしきものはない。ただ、身体のいくつかに丸い突起状の部分はあり、そこが目のはたらきをしているのかもしれなかった。 「屠ってくれようぞ」  見えていた。異形の邪神が、その禍々しい腕をこちらに伸ばすのを。それでも、理恵はその場を動くことが出来なかった。 「理恵ちゃん!」  それを見て取って、メルが彼女の身体を抱えて飛んだ。目の前を、青い鱗でおおわれた腕がかすめる。間合いをとって、メルは彼女を下ろした。 「……っ、動けなかった」 「理恵ちゃん……少し私が様子見てみる」 「ん、頼むわ……ごめん」 「いいってことよ」  メルは大きく前に進みだすと、邪神を見据え、ゆっくりと手にした斧槍を回し始めた。それは次第に高速になり、ウンウンという風のうなりだけが残って見えなくなった。 「──いきます!」  風鳴りのする斧槍を、ヘリコプターの羽根のごとく頭上に掲げて、天使は跳んだ。邪神も迎撃は怠らない。さまざまな姿の腕を伸ばして虫を払うようにするが、天使は背の羽根を使ってうまく角度を変えてかわしていった。  伸ばした腕の根元に、高速に回転する斧槍を打ち下ろした。  肉を、骨を斬り断つ鈍い音。それぞれの断面から噴き出る、それぞれの色の体液。三本の腕が床に転がり、うねった。 「メル、いい仕事だ」 「へへん。正義の天使が、古臭い神様に負けてたまるもんですか」  理恵は自分の足を平手で二三回叩いた。一歩踏み出す。動いた。  さっきはまるで体が動かせなかった。邪神の腕にとらえられ、命を落とすのがまるで運命であるかのように、それを当然に受け入れてしまっていた。  恐怖とは違う。むしろ、自分の頭のなかを瞬時にして書き換えられたようだった。恐れ、痛みの忌避、苦しみの予感、死への不安。それらの感情が、すばやく消しゴムで消されたように意識からなかった。  精神攻撃の一種だろうか? 理恵は警戒をしながら、それでも自分の体がきちんと動くことに安堵した。 「今度は、いけるから」  再度、理恵が前に出る。炎の「素」は集まりつつあり、彼女の掌で光を放っていた。 「浅はかよの」  邪神が声を発した。理恵が「素」の十分な量を集める前に、邪神は次の行動を起こした。  ぐしゃり、と異形が一気に崩れる。同時に糞臭のような酷い匂いを放った。あとには黒茶色の半液半固の物体が残った。まるで大男が腹を壊して下痢をしたような、と理恵は思ったが、その空想は彼女を面白がらせはしなかった。  嫌な予感がした理恵は、「素」が十分でないながらも炎の一撃をそこに向かって投げる。  小さな燃焼。ただしそれはすぐに燻って消えた。ずぶ、ずぶ、と山をなすように蠢き、また姿を変える。  形をなすにつれて、匂いも次第に薄まっていく。小さな柱のように盛り上がり、そこから枝のように二本の突起、頂部がくびれ、人型になっていった。  その動きが止まり、ある人間の姿を完成させる。  理恵は歯噛みした。 「嫌な冗談ね」 「姿形がすべてではない、と人間はよく言うのだろう。別に関係ないではないか」  つややかな、ストレートボブが鋭角を刻む髪。  極度に太股を露出したプリーツのミニスカート、同色のブレザー。肉食動物を思わせる、鋭い視線を放つ吊り目。皮肉な笑いをたたえる化粧気のない口元。  それはまさに、理恵を鏡に映したようだった。 「攻撃をためらうだろう、とか思ってるんだったら止したほうがいいわよ。私、自分の顔あんまり好きじゃないの」 「君の感情は関係ないさ。お遊びだね。そもそも神が、人間とまじめに戦うとでも思っているのかい」  その次の瞬間、理恵を熱気と爆音が覆った。身体を揺らすほどの爆発、舞い上がる粉塵。  理恵とメルの腕を伸ばしたぐらいから外側の周囲が、床を削り取ったように低くなっていた。お立ち台に残されたような格好になっている。  意図的に理恵たちを排除した部分を床から爆発させたのだった。 「理恵ちゃん!」 「っ……」  速い。挙動も呪文の詠唱もなく、これだけのエネルギーを放つことが出来るとは。  強い弱いの問題ではない。何か知恵を使って乗り越えられるものでもない。 「だから遊びなのだよ。君の『ビナー』の位格の力がどれほどのものかもわかる。それに合わせてやろうじゃないか」  魔法は基本的に、エネルギーの変換だといっていい。一見摩訶不思議な力でも、そこにはルールとロジックがある。魔法の力に関係するものは術者の能力、時間、気ともいう場の力、それに加えてサポートするのが呪文の詠唱であり、杖や指輪といった魔力を持った装備品となる。  理恵の場合は、その場に存在する炎の「素」を集め、それを炎として具現化するという手をとっている。この「素」はイメージ的には原子のようなものではあるが、物質として存在するものではない。数学的における虚数に近い。虚数はその数が大きくなっても実際の数として数直線状に並ぶことは出来ないが、虚数を掛け合わせることで実際の数に化ける。その掛け合わせる作業を、術者が行うわけだ。  大きな術を放つには、「素」を集める時間も必要になる。集積、変換、放出が一連の流れになるが、邪神はそれがゼロに近い。  理恵の姿をとった邪神が、瞬時に体の周囲に炎球を円状にまとわせた。衛星のようにぐるぐると炎球が回る。  ごう、と身体に響く音とともに、ピッチングマシーンのように次々と打ち出される。メルが理恵の前にせり出て、斧槍で打ち防ごうとするが、すべてはとらえきれない。半分は後ろにそれ、理恵は避けるのに精一杯だった。反撃の余裕などまるでない。  最後の一球がメルの斧槍を逃れて理恵へと向かった。理恵はちょうど直前の炎球を避けて跳んだところであり、計算されたようにその着地点に炎球は向かっていた。 (避けられない!)  せめても、と腕で頭を保護し身体を縮めた。  しかし、衝撃はなかった。理恵に当たる寸前で炎球は軌道を変え、背後の壁を削るにとどまっていた。 「楽しんで、いただけてるかな」  邪神は口角を上げ、膝を地面についた理恵を見下ろした。理恵の服は土や泥であちこち汚れてしまっている。  まるで、力のレベルが違う。邪神がいうように、彼にとっては遊びでしかない。いつでも理恵を殺そうと思えば、飛ぶ蚊を落とすより簡単にできるだろう。 「逃げよう、理恵ちゃん」 「背中に穴をあけられなけりゃね」  小声で会話を交わす。  邪神はそんな様子をにこやかにただ見ていたが、急に首を動かした。 「──ふむ、騎士の登場のようだよ。『栄光』か」  遠くから、草を切る足音が近づいた。その場に闖入する男が一人。 「正義って何だ! 俺のことさ!」  少し高いところでそう叫ぶと、理恵の名を呼びながら駆け寄ってきた。 「理恵! 大丈夫か!」 「いや、あんたが頭大丈夫か聞きたいわ」  邪神の口にした『栄光』は栄の力の名、「ホド」だった。栄はその力の具現、「栄光の拳《ブロウオブグローリー》」を、青い光として右手に輝かせていた。 「無理すんなって言ったろ。定文の奴も俺に何も言わねえし……あ?」  栄はそこで初めて、もう一人の理恵の存在に気づく。邪神は先ほどの禍々しい笑みをたたえることをやめ、何故か驚いた表情を見せていた。 「栄! 騙されちゃだめ! そいつが親玉よ!」 「え?」  肩にまわそうとした手を離し、栄は理恵と距離をおいた。 「ち、違っ、私が本物で」 「そうだよ、あたしが保障する。理恵ちゃんの本物はこっちだよ」  守護天使がいうのだから、そちらを信用すべきだろう。そう思い直し、また理恵のほうへと近づこうとする栄に、邪神は走り寄ってきた。 「危ない、離れて!」  栄の腕をつかみ、その動きを制する。 「メルも騙されているの。わかるでしょ、私が」  邪神は目を潤ませ、栄を上目遣いに見つめる。栄は何度も理恵と邪神を見比べるが、視線が往復するばかりで困惑するだけだった。 「いや……待て! 待て! わかる! ほれ、そっちに並んで」  栄が理恵と邪神をいざなって、横に並ばせる。  この不意を突いて、どうこうしようというのは邪神の考えにはないらしい。そんなことをしなくても理恵、メル、栄をまとめて倒せるだろう。いまはこの「本物はどっち」遊びに興を感じているようだった。  並んだ二人を、つま先から頭のてっぺんまで見比べる。違いはある。片方は衣服がいくらか汚れているし、見せる表情も異なっている。汚れている理恵のほうが困惑したような表情で、そうでないほうは訴えかけるような目をしている。 「えっと……便宜的に理恵A、理恵Bと呼ぶことにする。そっちがAな」  栄は右側に立った、汚れていないほう、すなわち邪神を指差した。 「私がAでしょ」  Bとなった本物の理恵は当然ながら反駁する。すぐにわかってくれるはずだという希望は裏切られた。 「いや、まあ。便宜的だって……後ろからも見てみないとな。前向いたままでな」  栄は二人の後ろに回る。しばらく眺めていたが、片方の理恵の尻をスカートの上から触った。 「きゃ、何すんのよ! こんな時に」  理恵Aの邪神が怒って振り返った。 「んー、反応が普通に理恵だ」  もう一人のほうの尻にも手を出す。 「ば、馬鹿じゃないの?」  栄は何事もなかったようにもとの位置に戻って、なぜか声を変えてのたまった。 「はい、質問タイムでーす。本人しかわからないことを聞いちゃいましょう」 「は?」 「じゃ、まずAさんから。出身地は?」 「兵庫県。宝塚よ」 「そなの?」  理恵Bのほうに尋ね直す。 「知らんなら聞くなよ。……あってるわ」 「じゃあ次、Bさんに。初オナニーはいつ、どうやって」 「セクハラじゃないの。そんなの答える気はありません」 「怪しい」 「怪しくないわよ」  理恵Bと栄が睨みあっていると、横の理恵Aが口を開いた。 「小学生四年生のとき、本の角で」 「うわわわわわ、なんで知ってんのよ」 「そなの?」 「だから知らんなら聞くなっっつーの! 意味ないやろがい!」  栄はしばらく何か考えていたようだったが、咳払いの後、うやうやしく宣言した。 「──結論、わからん」 『ええええ』  二人の理恵と、メルの声が落胆の調和を奏でた。 「見た目も声も、尻の肉づきも同じ──だが、見分ける可能性としてひとつある」  栄は指を一本立てる。そこに何があるわけではないが、二人の理恵はその指先に視線を集めた。 「それは」  二人が、息を飲む。 「──セックスしたらわか」  言葉が途中で止まったのは、二人が同時に蹴りを繰り出したからだった。  栄が派手に倒れてこちらに目を向けていない間、邪神は口を少し横に伸ばして、理恵に笑いかけた。笑みは返さず、頬の筋肉を少し動かすことで返事とした。  明らかに邪神はこの状況を楽しんでいる。少なくとも、すぐに危険が及ぶことはなさそうで理恵は少し安心したが、これからどうなっていくのかは予想もつかなかった。 「てか真剣な話なんだけど、ほれ、ここまで同じだったら身体に聞かなきゃわからないというか……、ちょうどこの子もいてペアが二つできるし」  栄はメルを指差した。 「私はいいわよ。それで私が本物だってわかるんなら」  先にそう言ったのは邪神だった。そうなると理恵のほうも引っ込みがつかない。 「……わかったわよ」  理恵がしぶしぶ応じると、ポンという小気味いい音とともに彼らの前に大きな物体が現れた。キングサイズよりもさらに一回り大きいベッド。シーツも洗いたての爽やかな香りがする。 「用意がいいわね」 「あんたが出したんでしょ、偽者」  おそらくは邪神の力だろう。栄の珍妙な提案に乗っかる邪神をいまいましくも思ったが、同じ行為をするのなら、綺麗なところでできるということに、安堵を感じもした。 「ほら、ぴったり寄って、お尻もひっつけて……あ、パンツも同じなのな」  四人はベッドの上に靴を脱いで移動した。理恵と邪神は栄の指示で四つんばいになってベッドに手をつけている。  栄が二人のスカートをまくりあげて、露わになった尻どうしを密着させた。特に色気のない、白い木綿のショーツがピンと張っている。  理恵はしっとりとした、自分と同じ肌が触れるのを感じた。大きめでボリュームのある理恵の尻肉が二人分ならび、圧倒すら覚える。 「ん……栄、楽しんでない?」 「いたって真剣ですよ……ああ、ほくろの位置まで同じだ。腰のところにあるの知ってる? メルちゃんも俺の横で、もう一人の理恵を可愛がってやってくれ。途中で何回か交代するからな」 「ん、うん」 「じゃ、始めよう。魔女はどっちか、だ」  栄はまず、理恵Aであるところの邪神のほうから手をつけた。尻肉の重さを確かめるようにあちこちを手でわしづかみにした後、ショーツの尻の部分の両側から指を差し入れて引っ張り、Tバックのような形にした。 「ん、ふぅあ……」 「これ好きなんでしょ? ほら、そっちもしてあげないと」  メルも促されて、理恵Bのショーツに手をかける。同じようにして、ショーツの股間にあたる部分を紐状にして、秘部へと食い込ませた。 「ひぃぅ! はぁ、んっ」 「パンツを食い込ませるのが好きなのまで同じみたいだな」  尻をほとんど露出し、ショーツが吊り上げられるたびに二人の理恵は嬌声をあげた。何回か繰り返しているうちに、その音にじゅっ、じゅっ、という湿った音が混ざってくる。 「ほんとだ、濡れやすいのもおんなじ。どっちもえっちな理恵ちゃんだ」  はじめのうちは、ためらいがちだったメルだったが、次第にどこか嗜虐的なこのシチュエーションを楽しみ始めたようだった。 「んはぅ、だってこれ、あそこいっぱい擦れて、ふぁっ、ん、うぁ」 「気持ちぃ……いや、ぐちゅぐちゅしてきちゃってるよ……」  双子のような二人が、同じ声で白い尻を二つ揺らす。その揺れ方も、ただ悶えるだけでなく、自ら淫欲を求める動きへと変わっていった。 「ん? 俺引っ張ってないのになんで食い込んでるの? 何してるの?」 「だって、だってぇ……止められないもん、んぁっ、ふぁあぁっ、あぁ」 「私も、クリがたまにこすれて……ん。んぁ、もっとグイグイしてくれないと、あ、あ。あふんっ、足りないよぉ」  尻を上下に動かすと、紐状になったショーツを陰部が咥えこんでいるように見える。陰毛に覆われた貪欲な口は、多量のよだれをだらしなく垂らしながら、周囲の縮れた毛に露をまとわせていた。花びらのような唇はオスの来訪を待ちかねるように、ショーツからはみだして、誘う香りを放っている。  パシッ! 『ひぃぃゃっぁっ!』  二人の悲鳴がハーモニーを奏でる。  栄が両手を使って、同時に二人の尻を平手で叩いた。白く透き通る、むきたての桃のような尻に、たちまち栄の手形が赤く浮かび上がる。 「いやらしい子には、おしおきをしないとな」 「そうだね!」  パシィッ! 『いやぁぁっ!』  メルも栄にならって、すでにできた手形を避けるような場所に平手打ちを食らわせた。  やはり二人揃って悲鳴をあげたが、そこには痛さにあげるものの中に、少しだけ甘美な響きが含まれていた。 「んー? 虐められるのも好きだったりするのかな?」 「そんなこと……ない。もぅ、やめてよ」  パシィッ! 「いひぃぃぃっん!」  繰り返される同じようなやりとり。すっかり手形は判別できず。尻全体が熟したように紅潮していた。  おもむろに、栄は手をショーツの股間の部分へと伸ばす。指を縦に並べて少し強く突き入れると、特に抵抗もなく指の第一関節当たりまで入り込んでいった。 「びしょ濡れじゃない。こっちの理恵ちゃんは叩かれて感じる変態さんと……あ、こっちもだ。こんなところまで真似なくていいのに」  そんな言葉に、数回の平手打ちを受けた二人は息だけ荒く、言い返すこともできずにいた。 「──じゃあ、次。イかせ合戦だ」 「なにそれ、なにそれ」  合いの手をいれるメルは、すでに興味津々だった。 「挿入はなし。それ以外なら何をしてもよくて、俺たちを先に射精させたほうが勝ち。すなわち本物の理恵と認めよう。本物ならそのあたりもよく知っているだろうからな」 「……本気で、言ってないでしょ」  いささか呆れた調子で理恵Bがつぶやく。 「相手は選んでいいの? じゃあ、あなたから選ばせてあげる」  理恵Aがそういうので、理恵Bは栄を選んだ。  それではとばかりに、理恵Aはメルの正面にかがみこみ、メルのレオタードに似た衣服の股間の部分をさすり始める。 「ふわ、ん……はんぅ」 「さ。大きくさせて」  またたく間に、女性の体となんら変わりないその部分が盛り上がり始め、はっきりとその中に隠れるものが形を浮き上がらせた。  白い布地は少し曲がったホース状に盛り上がり、巨大な芋虫が隠れているように見える。  つかむようにして、そこを上下にしごく。曲がっていたシルエットは次第にまっすぐとなり、さらにその盛り上がりを増した。 「うふ、ふぅむん……あふ」 「ほら、先っぽがにじんできたんじゃない?」  理恵Aが指摘するように、その盛り上がりの端がコイン大の円形に濡れて染みをつくっていた。手だけでなく、口を寄せてその部分に歯を立てずに甘噛みをする。 「あ! ひぃん、かみかみしたら、あ、んんぅ、だめ、だめぇ……もう、もぉだめなの、もっと、直接して、直接こすったり、お口で可愛がって!」  メルは布地越しの男性器への愛撫に、わきあがってくる淫欲を抑えられなくなっていた。自らレオタード様の股の部分を力任せに引っ張って破り捨てる。それとともに、勃起したペニスがバネ仕掛けのように跳ね上がった。 「我慢できなかったのね。可愛い子」  理恵Aは上等な食器を鑑賞するように、そそりたったメルの肉棒を色んな方向から眺めた。さきほど服に染みをつくった先端には、その原因となった我慢汁が樹液のごとくにじみ出て、幹を垂れていた。 「ほら、ぼうっとしてないと先にイかしちまうぜ」  栄が、そんな様子を見ていた理恵Bに声をかけた。 「ん……わかってるわよ」 「さて、どうやってイかせてくれるのかな」 「とりあえず、横になってよ」  栄はにやにやしながら、理恵Bに従ってベッドに寝そべった。 「で、どうすればいい?」 「あんたは、ぼうっとしてればいいから……あんまり見ないでよね」  理恵Bは栄のベルトをはずし、すばやくパンツごとズボンを下ろした。栄の性器はまだ通常モードで、だらしなく主と同じく寝そべっている。 「あっちと比べて素っ気なくないか?」 「いいのよ。黙ってなさい」  理恵Bは栄から顔を隠すようにして、背を向けて栄の股間の上にしゃがみこんだ。理恵Bがスカートを脱ぐと、理恵の股間の部分と、栄のペニスが接触しているのが見えた。じっとりと濡れた理恵のショーツの少し盛り上がった部分に、栄はひやりと冷たさを感じた。 「ん……んぁっ」  どうするとも言わず、理恵はおもむろに動き始めた。  尻を前後にスライドするようにして、ショーツごしに性器どうしをこすりつける。布地からあふれるヌルヌルした感触と、布地自身の少しざらつく感触が、栄のペニスを起き上がらせるべく刺激を与えた。 「──ん、んぅ、んっ、んっ、っ、あ……、ん、っ、ん! あぁ、ん、んぅ」  理恵Bは栄のペニスの位置を調整しながらゆっくりと前後動を始めたが、次第に栄のペニスが硬さを増していくと、その必要がなくなった。うねうねと腰を艶かしく激し動かし、理恵自身の性感も高めていった。 「ん……、尻コキっていうのか、これ。う……ん、んっ、どこで覚えた?」  強張りを抑えきれない肉棒への刺激もさることながら、目の前で淫らに尻が激しく蠢いている視覚でも、栄は否が応でも高まっていった。  紐状になったショーツからは肛門のしわを微かにのぞかせ、陰部はすっかり陰毛をはみ出させている。白いショーツは淫液ですっかり陰部に張りつき、そこを暗く透けさせていた。 「なかなかやるわね……こっちも手は抜かないから。違うものは抜くけど……んむ」  大きく口を開き、メルの紅潮した肉棒を口に含んだ。普通の男性よりも大きめのモノを持っているため、精一杯に深く口に入れてもその半ばまでしか届かない。 「ふぁぁぁっ、おちんぽ、あっついよ、おちんぽあついよぅ……」  理恵Aの口内の熱に、内からジンジンとしびれるような感覚が沸きあがる。くわえたものの形状を探るように、舌先で、舌全体で、唇も使ってペニスの表面をねぶった。 「こういうのが好きなんだよね」  ぶっ、ずっ、ぶぶっ、じゅぶ、ぢぅ、ぢじゅうっ。  唇をすぼめ、雁首のところを一センチ程度の前後運動でひたすら刺激する。口の中で、メルのペニスが大きく、雁首の張りがさらに大きくなるのがわかる。 「ふぁ、んぁん、っ。ふぁ、ぁ、だ、だめぇ、あ、しびれ、て、あんあん、ああん、おち、おちんぽ、さきっちょ、じ、じんじん、するぅ」  ぎゅっとすぼめられた唇の円で、執拗に雁首が根元のほうから逆立てとばかりに締めつけられる。同時に、舌も休まずにペニスの先端の鈴割れの部分を優しくなぞる。  ベッドに膝立ちになっていたメルだったが、下半身に力が入らなくなり、くたりと背中をベッドに預けた。間をあけず、メルの股間へ顔をうずめるようにして、理恵Aはメルのペニスの責めを続けた。  それを横目に、理恵Bも腰の動きを止めない。 「入れなきゃ、いいんだよね」  そういうとショーツを素早く脱ぎ捨てた。ショーツはすっかり細くなって、シーツの上にただの輪のようになっていた。  ちゅぷ、つっぷ、ちゅっぷ、ぷちゅ。  直接触れ合うようになった性器が、高い水音をたてる。陰毛がこすれあう、さりさりという小さな音がそこに添えられた。たちまち、栄の股間はペニスをふくめてその周囲まで理恵Bの淫液でまみれた。 「ほんとに、濡れやすいんだな」 「馬鹿。無駄口たたかないで、んっ、あふっ、ん、気持ちよかったらさっさと……あふ、出したらいいじゃない」  ジューシーな陰唇が、洗車ブラシのごとく栄の熱い肉棒を縦に往復する。直接的な刺激にあわせて、理恵のなめらかな白い尻がぬるぬると腹から太股にかけて撫で回していく。  気持ちはいい。しかし、それは上りつめるようなものではなく、ずっとこうされていたい、と思う部類の快感だった。  教えてやろうか、ルール違反だろうか、と考えているうちに、隣のペアからいままでと声質の違う、はりつめた声が聞こえてきた。  まずいと思ったのか、理恵Bも尻の動きを変えた。前後に加えて、陰部をぐいぐいと押しつける。半ば亀頭が、理恵の膣穴に埋没し、「入れない」ルールにきわどい動きとなっている。 「ん、くっ、理恵……。あ、すげ……」  確かに刺激は増したが、それは理恵自身に対しても同じだった。 「んっ、んぁああっ、あ、だめ! こっちも、んふぅ、クリ、いっぱいこすれ、てぇええ、ふぁあ! ん、んあっ、栄、だめ、私、先にぃ先にいっちゃいそう、ん、んんっ! ああ、ああああああっ!!」  激しい前後運動がぴったりと止まる。理恵の体が一瞬にしてこわばり、身体を反り伸ばした。 「あ、だめ、おちんぽイっちゃう、お口の中でイくよ、あ、あぅあぅあぅ、んあああ、ああああああっ!(びゅ!) ああっ!(びゅくうん!) あああぁぁっ!!(びゅびゅぅーっ!!)」  メルの肉棒は白い旗ならぬ粘液を、責めに降伏した証として散らした。 「決着はついたみたいね」  口のまわりに粘りついたメルの精液を舌でなめずりながら勝ち誇る理恵A。 「ご、ごめんね、理恵ちゃん……」  盛大な射精の後の徒労感と、先にイってしまったことに対する引け目で、メルはベッドの隅で羽根を小さくたたんで縮こまっている。 「あのねえ、そんなんで何がわかるっての……」 「真剣にやってたくせに。見事な腰使いでね」  ぷっ、とわざと声を出して笑う理恵A。 「あ、あの、そ」 「はいはい。じゃあ泣きの一戦認めましょう。次のお題は?」  とっておきのゲストを紹介するように、手を栄のほうに差し伸べる。栄もしゃちほこばって、あごに手をやって厳かに宣言した。 「それでは、挿入ありの判定を行いたいと思います!」 「代わり映えしないわね」 「ノンノン。ノンノンといっしょ」 「商標を使ったボケはつっこみにくいからやめて頂戴」  理恵双方から茶々を入れられつつも、続けてルールを説明する。  基本は先ほどと同じイかせ合戦。先に射精をさせたほうが勝ち。ただし、挿入する穴を限定するものとする。たとえば、アナルを選べばそこへの挿入のみとする。途中から膣穴に変更することは不可。  理恵Aはふんふんとうなずいているが、理恵Bは好きにしろとばかりに空を見つめている。 「さ、またあなたから選ばせてあげる。お相手をどうぞ」  理恵Aのその言に、理恵Bは再び栄を選んだ。 「いいのか?」 「嫌なの? 私は別にどっちでも──」 「私もどっちでもいい。じゃあ私が栄を」 「……だめ」  離しかけた栄のシャツを、再びつかむ。 「素直じゃないのね。じゃあ、どっちを使うの?」 「お尻……じゃないほう」  理恵Bの声が先細る。 「それじゃわからないわね」 「うん、それじゃわからん」 「理恵ちゃん、ちゃんと言わないとわからないよ」  三人が畳み掛ける。 「お……お、まんこ」 「よくできました。じゃ、私はメルでお尻にしてもらうわ。不利じゃない? まだ変えてもいいよ」 「いい」  理恵Aには不思議であった。自分の身体のことを知っているなら、迷うことなくアナルを選ぶはずだった。  決して理恵の膣穴の締りが悪いというわけでもなく、女性器は人それぞれに個性があり、理恵のそれはまとわりつくような膣壁を持ち、とろかせるような快感をもたらす名器の部類に入るものだ。  しかし、こと「早くイかせる」ということについていえば、強力な締めつけを持っている理恵のアナルには間違いなく軍配が上がる。自分がわかっているぐらいだから、当人が知らないわけはない。その上でアナルを選ばない理恵Bの選択がわからなかった。 「栄、早く」 「お、おう」  促されて結合を開始する。前戯などまどろこしいことは必要なかった。理恵の陰部はまだ枯れることなくこんこんと淫汁を湧かせていたし、さっき達しそびれた栄のペニスも潜入を待ちわびていた。  つっぷ、ぶっちゅぅぅううっ。 「ん、栄の、栄の、入ったよ」 「あぁ、理恵の……奥まで一気に」  抵抗はまるでなく、すぐにやわらかな肉襞が、多量の愛液をまとって歓迎した。正常位のまませわしなく数回ピストンを繰り返すと、さらに強い結合を求めて理恵の足首をつかまえ、足を持ち上げて尻を浮かせた。 「ふぁぐ、んんぁ、ぐぅって入る、えぐってくるよ、あ、あふ、ああっふふあ」  膣穴が天を向き、陰唇が開いた淫らな姿をさらす。たしなめるように、赤く怒張した杭が力強く突き入る。淫靡な折檻に垂らされるのは涙ではなく、欲におぼれる淫らな涎だった。  片や。 「ほら、こっちもするから。すぐに入れてもいいよ」  理恵Aがメルに対して尻穴を広げて待つ。  陰唇からこぼれた蜜でアナルの周りは怪しくてかり、肛口は節足動物が餌を求めるようにひくひくと動いていた。 「ん、うん」  メルのペニスは極限まで反り立ち、ずっしりとした重さをものともせず、頭を天に向けている。淫欲が具現化した鎌首は、突き入るものを求めて、じくじくと先端の穴から透明の汁を垂らしていた。  理恵Aの尻をつかまえ、餌を求める口に肉棒を突きつける。すぼまる肛門の皺が、メルの亀頭をかすかに撫でた。 「さ、お尻にいっぱいしていいんだよ」 「い、いくねっ」  ぐぐぅ、ぐぶっ、ぶぐぐっ。  本来は一方通行の門が、反対方向から肉欲を求めて侵入を許す。抵抗を緩めることはないが、隣の穴からこぼれた愛液が門を濡らし、潤滑油となって侵入をしだいにスムーズにした。 「ん、んふぅあ、すっごぃ、広がってく、奥に入ってくぅ、ん! んぅああふ、いや、すご、いっぱいぃ、いっぱい、お尻、いぃっ! いぃいんっ!」 「は、理恵ちゃんのお尻、理恵ちゃんのお尻の穴、入ってくよ、お尻の穴に、は、はぁぁう、しぼってくる、しぼられて、ちんこ、ぎゅってなる、ふぁ、んんはぁぁっう! うぉ、うぅおあぁ」  メル自身が信じられないほど、その狭い空間に陰茎は埋没していった。もう押し込めないほど突きこんだ後、腰を引いていったん抜こうとすると、雁首のところでつかえた。咥えこんだ獲物を離さぬよう、強い力で尻穴がつかまえている。  少し奥に突き、勢いをつけて引き抜こうとするが、やはりすぼまった肛門が雁首をつかまえて離さない。 「んんっ、くぁっ! ふぉぅん、ひはぁぅ、あっ、ちんぽ、ぐりぐりって、ひっかかるの、私のお尻、お尻の穴、抜けちゃう、ぬけ、ふあぁっぁう、ひぃ、いぃい!」 「あ、あ、これ、すご、すごひぃ、すごひぃ、ひぃいぃよぅ、理恵ちゃんの、お尻、お尻の穴にひっぱりこまれて、うぁ、おちんちん抜け、抜けないよぅ」  二本の指ほどの幅だろう。肛門に入ったすぐそれだけの幅が、強力なストッパーとなって一定以上の太さの出入りを阻んでいる。いっときは突入を許したが、二度と脱走を許すかとばかりに、必死に前後動するメルのペニスを締めつけている。 「うぁ、ぐぅん、ぐりぐりきてるのぉ、お尻でちんぽごりごりしてる、お尻の中けずれちゃう、ちんぽどりるで削られちゃう、ふぁ、でもいいの、すっごくいいの、ちんぽどりるでぐりぐりして、いっぱい穴掘って、あっ、あっ、あ、あんあんあんあめぇぇ、あぶ、いっ、もっと、もっとちんぽどりるぐりぐりしてぇ!」 「するよ、すぅ、ぐりぐりするよ、お尻工事しちゃうからね、いっぱい、いっぱいして、あっ、あ、でも、でも、気持ちいいの、工事なのに気持ちいいの、ぐりぐりぐりぐり気もちいぃい!!」  動きは単調だった。理恵Aはベッドにしがみつくかのように尻だけ突き出してほとんど動かなかったし、メルもしっかりと大きな尻をつかんで固定したまま、ひたすら前後動を繰り返していた。  一方、栄たちのほうは溶け合うように何度も体位を変え、横に寝そべらせた理恵Bの足を大きく開かせて横向きに挿入してみたり、後背位でぴったりと身体を重ね合わせて交わったりしていた。  ぐるぐると回って、再び正常位の体制に戻る。 「ん、むふぁ、さ、栄……耳に、キスして」 「おう」  栄は、理恵の耳そばの髪をかきあげ、息を潜めて耳に口づけた。  理恵が少し身体をもたげて、栄の耳に同じく口を寄せた。しかし、触れることはせず、二言、三言何かいうように唇を動かすだけだった。  それを聞いて、栄は瞬間、眉間にしわを寄せたが、何事もなかったかのように再び理恵の耳を舌で愛撫していった。  舌を尖らせ、耳の穴に差し入れる。耳の溝を一筆書きするように、端から端までたどり、唾液をふくませてわざとピチャピチャと音をたてた。 「……んふぁ、ひぃゃあ、ひぃっぅふ、ん……くすぐったい、ひぃっ、ふぁあ」 「知ってる? 理恵のあそこ、もっと濡れてて、もっとぐちょぐちょだらしない音たててるんだぜ」  じゅうぅう、くっちゅうぅ、ちゅっぷっ。  栄はペニスをいったん抜き、また埋没させるという動きでわざと音をたてさせた。 「ちがうもん、ちが、あぁ、栄がそんな、ひぅ、あ、ああああん、また強いぃ、うん、ああああっ、あああん、ひぃぃいい、いいん、いん、いあぁぁっ、ああ」  口答えをしようとすると、すかさず激しい動きにして、その返答をはばむ。理恵Bはいいように栄に翻弄されていた。 「好きだからな」 「な、んふぁ、なに、いまさら、あん、あん、ンあ、そんな」 「返事は?」  そんな間にも、栄は理恵Bの膣内をかき回すのをやめない。大きく円を描くように動かすと、中でぐっちょり、ずっちゅりと水音が大きく響く。 「ふぁ、わたしも、好き、好きぃ、あ、さかえ、栄好き、大好きなんだよ、だから、だから、もっとして、栄の、特別なの、私の特別なの、あ、いや、また、つよっ、あ、あああん」 「……聞けてよかった。飛ばしていくぞ」 「あ、あん、う、いん、いん、いぃぃ、栄のちんぽすっごい、すっごいの、カチカチの熱い棒が暴れてるの、あ、もっとして、私のおまんこずぶずぶして、まんことちんぽもっと交わらせて、私のやらしいおまんこから、お汁枯れちゃうぐらいにずぶずぶして、あ、あ、そう、そ、お、すきぃ、すきぃぃい! いあ、あ、あ、あめぇ、あぅむむぁ、ひぃう! ひ、ひん、ひぐぅぅぅっ、あ、ああは、はぁ、いいぃ!!」  二人はここへきて体位を変えるのをやめた。理恵Bは大きく足を開いて、栄の激しい動きをすべて受け止めた。  ぶっちゅる、ぐっちゅ、ちゅぶるっ、ぶちぅ!  だが、吼えるような声で、先に絶頂を叫んだのは二人のほうからではなかった。 「あ、あ、やっぱりあたし先にイく、理恵ちゃんのお尻でイく、あぅふ、ふぁ、アナルで射精しちゃう、ちんぽから噴き出しちゃぅ、ふぁぁぁぁああああっ、イく、イく、イクイクイクぅぉ、ぉん、あっ、あんうぁ、イックぅいうううう!」  ぶぶびゅぅぅ!! びゅううっ! びう! びゅっくん!  激しく理恵Aの腸内で暴れようとするメルの肉獣を、理恵Aの肛門と直腸は括約筋で押さえ込んだ。しかし、そのほとばしる獣汁には抵抗できず、一方通行のはずの腸内を滝登りのごとく白濁液が駆け上がっていく。  射精しながらもメルはぐいぐいとさらに奥へ、さらに奥へと精液を届かせようと腰を突き押した。肛門は広がり、さらに肉獣が狭い腸壁を削るように侵入していく。  さらに突きに突き、メルが肉獣をその根元まで突き入れたとき、理恵の頭の中で白い光が明滅した。 「うくっ、くぅぅうううん! メルのちんぽ、ちんぽが精液いっぱい出してる! いっぱい出て私のお尻の中洗ってる! あっ、くる、きちゃう、肛門でいっちゃう! お尻イく! 尻穴で、え、あぐ、ぐ、ぐぅううううううっ! い、イッ、あくぅぅんんんんっっっっツ!!」  膝を下ろし、尻だけ浮かせてメルに突かせていた理恵Aだったが、最期にはその膝も浮かせ、背を反らし、手と足で横から見ると「への字」に突っ張るような形になった。ぶる、ぶるっ、とオーガズムの痙攣で身体を震わせると、糸の切れた人形のようにベッドに崩れ落ち、メルのペニスが引き抜かれた。締め上げる肛門から脱出した亀頭からは、まだじゅくじゅくと精液を漏らし、その雫がシーツへと落ちた。  勝敗はここに決まったが、もうひとつのペアはそれを気にもせず、自分たちのペースで高みを目指していた。 「理恵、理恵……ん、もっと、激しくしていいか」 「うん、うん。も、もっと、ふあ、これで最後かも、しれないから、あふ、激しく、もっと、いっぱい激しくして、あ、あ!」  理恵の承諾を得ると、栄はタガが外れたように力任せに腰を理恵に打ちつけた。 「──あんあんあぅあん、そ、それ、栄の、もっと、あああっ! あっ! むちゃくちゃで、いい、いい! あいちゃうの、あいちゃうよぅ、お腹に穴あいちゃう、でも、もっと、もっとぉ!」  もはや傍目にもこれで快感を得られるのかと思うほどで、獣の格闘にも見えた。メスが叫び、オスが吼えた。  オスは両の腕でぎっちりとメスを包み込み、メスは両の足でオスの胴をつかみこんだ。その肉の鎖は、がっちりと結び合いながら、互いをもっと一体にさせようともがいていた。 「り、理恵、最高だ、ずっと、いっしょだ、くっ、ん、どこへ行っても」 「うん! 死んでもいっしょ! あ、ああ、ついてくから、ついてくからぁ! あ、ちんぽすごいの、すごいの、きちゃうの、あ、あ、あふぅぅぅん! イくよ、まだイきたくないのに、ずっと、こうしてたいのに、あ、でもイくの、あ、栄も、栄もイって、栄のせーえき、いっぱい私に出して、ぜんぶ出して、あ、くる、ん、んぁぁぁぁぁあああああっ!! い、イックうぅうぅぅぅうううう!!」  膣内でぎりぎりと一気に締めあげが来る。同時に、理恵は腕と足でクモが捕食するように栄を力いっぱい抱きしめ、しがみついた。どこかに飛びそうな感覚。とっさに、その感覚が恐ろしくなり、大切な人を放さないように。  極限まで収縮した理恵の膣を、強引に三回往復したところで、栄と、その分身は限界に達した。 「理恵っ!! くっ!!」  びゅく!! びゅぅぅぅ!! ぶっ、びくびぅ! ぶっびゅ!  堰がくずれるように、熱い筒を熱いほとばしりが奔流となって理恵の膣内を暴れまわった。  頭の中から弾けたまぶしい光が自分を包んでいく感覚にまかせて、理恵はシーツに体重をすべて預けた。  射精を終えた栄が性棒を理恵の中から抜き取ると、二人の混合液がどろりとシーツに流れ出た。  深く息を吐き、栄は息を整えながら、理恵Aの前に立つ。 「さあ、これでわかったでしょ」  理恵Aが誇らしげに胸を張った。  ぶん。  冷たく青い流星。短い、風の切る音。  理恵が気づいたときには、もう一人の理恵の姿がなかった。  見つけられなかったといったほうが正しかった。だがそれは、頭を含めた体の上半身がなかったからだった。  自分がそうなったのか、と思い、自らの顔をおそるおそる撫でる。汗ばんだ顔は、まだ乾ききらず、汗の雫が口元をつたっていた。 「よくわかったぜ、理恵は一人で十分だってな。俺一人じゃこんな淫乱娘を二人も相手できねえ」  くわくわくわっ、と乾いた笑い声。  栄の声ではない。  崩れた肉塊が、その破砕面を揺らしながら、声を発している。  栄の放った拳が、邪神が化した理恵の上半身を砕き飛ばした結果だった。 「どうしてわかった。愛というやつか?」 「理恵はな、騎士様の必要のない女なんだよ。どれだけ自分がピンチでも、やせ我慢してやせ我慢して、もうだめだなって思ったときにでも、わざわざ助けに来てやった超絶美貌の騎士様に、てめえはてめえで逃げろっていう奴なんだよ」 「それは、愛というものではないのか?」 「いや、経験だな。こいつは馬鹿なんだよ」 「誰が、馬鹿なのよ」  ようやく身体をもたげた理恵が、シーツを胸元に寄せている。 「わかるさ、さっき彼にささやいていたろう? 『隙を見て逃げて』って」  邪神がそう言うと、理恵はさっと頬の頭を赤く染めた。 「あんたに聞こえてたのかい。なんとかイヤーは地獄耳とはよく言ったもんだ。馬鹿だろ? あんな最中にまで人のことを考えてるんだ。優先順位が違うだろうよ」 「『智』は徳だが、それを犠牲にする徳もある。『栄光』の名を持つものよ、馬鹿な娘を大事にすることだ」  くわ、くわ、とやはり乾いた声で笑う。 「褒められてるみたいだぜ?」  理恵はそれには答えず、照れ隠しなのかあさっての方を向いていた。 「いや、面白かったよ。人間にも少しは価値を感じられることを知ったのはいい体験だった」 「……てめえ」  邪神は身体を崩したまま、特に何もなかったかのように言葉を発している。  再び腕をふりかぶった栄を、理恵は手で制した。 「今回は、君たちに敬意を表して去ろう。当分は君たちの前に姿を現さないよ」 「正直、そのほうが有難いわ」 「知っているよ。──君はダゴンともやりあったのだろう」 「それは」  いまの世界が再構築される前。  理恵、そして栄をはじめとする、神の力の一部「位格」の名を持つ者たちは、古の神「ダゴン」と戦った。それによって、具体的に世界にどういう変化があったかはわからない。  理恵たちには、戦った記憶がある。栄や智たちが倒れ、最後には理恵もダゴンを道連れに散った。  そして、いまの世界に放り出された。 「平行に移動できる存在だからね。そういうことがあった世界も知っている。君たちも特殊な存在なわけだ。私も、この世界固有の存在にとっては異物だろう。だが君たちもそういう点では変わりがない」  邪神は、理恵がかつて生きていた世界の存在を口にした。 「どうする気?」 「どうする気もない。移動するだけさ。また遊び相手を探すとするよ」  空間が歪んだ。邪心の周囲の空間がいびつに曲がり、屈折する。光が、音が、そこで秩序を壊されるように、出鱈目な色とノイズ音を発していた。 「じ楽ゃしあ、まみたにし会てえいるればいよね」  辛うじて、そのように聞こえた。  歪みが収束し、黒点となり、消える。  静かだった。聞こえるものは木の葉を揺らす風の音だけだった。 「ふえぇぇぇ」 「……助かった、な」  大きく息を吐き出し、その安堵感に浸る。  栄にしても決して遊んでいたわけではなかった。道化を演じることで、戦いとは別の方法でこの場を切り抜けようとしたのは、理恵にもわかっていた。  それでも、素直に感謝の言葉は口に出せない。栄もわかってくれている。そんな信頼が、理恵から素直な言葉を引き出すのが難しい理由でもあった。 「ひとつ聞かせてくれ」 「嫌」 「どうして、最後の勝負のとき、アナルを選ばなかったんだ? 変なこというようだけど、お前のアナルはすご」 「嫌だって言ってるでしょ。みなまでいわないで」 「なんで?」 「嫌」 「教えてくれてもいいじゃないか。お尻が切れてたとか?」 「違うわよっ! あんたとするのが最後になるかもしれなかったから、普通にしたかっただけ! 悪い?」 「悪くない。その答えが聞けて満足」  にしにし、と意地悪く口角を上げる。 「──じゃあ、というわけで」 「何よ」 「ベッドも残していってくれたことだし、続きしないか? ご丁寧に、シーツまで新しくしてくれてるぜ」  栄のいうように、ベッドの上のシーツはたったいまベッドメイキングされたように、しわなく張っていた。じっとりと染みになったはずの部分も、跡形もなく洗いたてのような香りを放っている。 「あー、それ賛成」 「馬鹿じゃないの? 盛りのついた猫じゃあるまいし、ベッドがあるからしようって。お菓子があったら食べる? トイレがあったらおしっこするの? さっきのも別に納得してるわけじゃないのよ? だいたいあんたはいつも私がほんっとに……ん」  キスで口をふさいだ。手際よく、栄とメルは理恵をベッドに運び込む。拉致に手馴れた悪人のようだった。 「──あのね、せめて、もうちょっと小奇麗なところへ行ってから」 「食べられるときに食べる、やれるときにやる。今回も危なかったろ? もしものときに、ああ、あのときやっておけばよかったって」 「思うかっ!」 「はいはい理恵ちゃん、あんよ上げてー」 「あんたも同類か!」  一方。  やはり気になった智が、ヒッチハイクした車を乗り継いでようやく山中の切崎の家へとたどり着いた。  もっとも「家」はほぼ跡かたなく、そこに家があったであろう壁と柱の残骸があるのを智は見つけた。周囲は木がなぎ倒されたり、地面が不自然に削られたりしていて、なんらかの争いの爪あとを残している。 「おぅ……なんや祭りは終わりかいな」  しかし、その結果まではわからない。近くまで行けば何かあるか、と、歩を進める。  大きく開いた火山口のような穴を、風の力で飛んで渡る。その向こうの壁もついでに飛び越えると、荒れ果てたそこに存在するのが不釣合いな、大きなベッドが目に入った。 「んあああっ! あっ、あ、あんあんあんあんあぅ、栄、栄ぇ、すごいの、またきちゃうよぅ、いや、またくる、きゅううんってする、あぅ、ううぁ、ん! んああっ!」 「ん、ん、もう五回目だぜ? 最初乗り気じゃなかったくせに……ん、んっ」 「あっ、あたし先にイっていい? 先に、ああっ、イきそう、理恵ちゃんの顔にかけちゃうよ、理恵ちゃん、あ、出る、出るぅぅ!!」  もう日は傾きはじめ、白いシーツはかすかに赤く染まっていた。  その上で、理恵、栄、メルがくんずほぐれつと、お互いの肉欲をぶつけあっている。 「あーあーあー、何これ、私もまぜてぇや」  智が淫らな舞台へと、喜色を満面にして飛び込んだ。勝利の宴は、まだまだ終わりそうになかった。    彼女たちは、邪神の眷属とまた対峙することになるのだが、またそれは別の話である。