彼女を玄関で出迎えたのは、一匹の黒猫だった。 「――お客さんおんねよ」 そう言って彼女は服の下から彼を取り出した。 それからカバンを放り出すとそそくさとタオルを取り出して濡れた彼の体を拭き、エアコンを軽い暖房にして、押入れから探り出したタオルケットに彼の体をご神体のように据えた。冷蔵庫から牛乳を取り出しかけて、首をひねった後に携帯でメールを打つ。 「拾ってきたのですか」 男の声が、冷蔵庫に牛乳を戻した後、その中を物色している少女に投げられる。部屋の中に男の姿はない。部屋の中で動くものといえば件の黒猫だけだった。 「そんなとこやね。キーオは仔猫に何やったらいいか知っとる?」 「存じ上げません」 しかし、やはり声はその黒猫から発せられているようだった。そして少女はそれを当然のように黒猫に話しかけている。 [(題未定)] より